2014年06月19日

Inside Llewyn Davis

『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』を観た。


Inside Llewyn Davis.jpg


コーエン兄弟の久々の音楽ネタ映画ということで、
かなり前から期待していた。
映画のヒントとなったデイヴ・ヴァン・ロンクの自伝を
読んでから観ようと思っていたが、残念ながら間に合わず。

思ってた以上に地味な映画だったが、
非常に愛すべき作品、というのが第一印象。
全編失望感に支配されているのに、
あまり深刻ではないように見えるのは
飄々としたオスカー・アイザックの演技なのか、
フォーク・ミュージックのほんわかとした暖かさなのか、
はたまた準主役と言ってもいいあの「猫」の存在なのか。

お金のためにコロンビア・レコードに出向き、
ノヴェルティ風のポップ・ソングを歌うシーンのおかしさや、
シカゴまで行きアルバート・グロスマンとおぼしき人物の
オーディションを受けた時に言われた言葉の虚しさ、
ホーム・パーティで「1曲歌え」と言われて
「俺は生活のために歌っているんだ!」と怒った時の切なさなど、
ダメ男ルーウィンの言動のひとつひとつが
心に染み入って仕方がなかった。

「歌う」ことで生きる道を選んだルーウィン。
だが堅実な道を勧める姉と衝突し、
「俺はただ生存するために生きるのなんて嫌なんだ!」と吠える。
「あなたの世界じゃどうか知らないけれど、
みんな生存するために生きてるのよ」と冷静に答える姉。
この台詞、身につまされたなぁ。

キャリー・マリガンがクールでしたたかな
女性フォーク・シンガーとして登場。
自分がキャリー・マリガンを初めて意識した『17歳の肖像』も
本作と同じ1961年が舞台の映画だった。
やっぱりこの女優は60年代顔だなと思う。

最後にやっぱりあの「猫」のことを。
あの猫の名前はユリシーズだったが、
確かキャロル・キングがNYで飼っていた猫も
ギリシャ神話のユリシーズとペネロペの息子の名前からとった
テレマコスだったことを思い出す(ジェリー・ゴフィンが名付け親)。
1960年代初頭のNYではギリシャ神話から
猫の名前を付けるのが流行っていたのだろうか?

と思ったら、
『オー・ブラザー!』のジョージ・クルーニーの役名が
ユリシーズだったそうで、
そこから取ったんじゃないか推測してる方がいた。
なるほど、『オー・ブラザー!』と本作は
コーエン兄弟のルーツ・ミュージック映画として双璧を成すから、
そんな小さなリンクも嬉しくなる。

2本続けて観たくなった。


今日のBGM:「Farewell」by Bob Dylan

NYはフォーク・ミュージックが似合う街だなと、
このトレーラーを観てもつくづく思う。


posted by Good Time Graphicker at 04:04| 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月09日

Withnail and I

最近観た映画《Part.2》

『今日、キミに会えたら』

新宿シネマカリテで現在
「カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション」
というイベントをやっていて、
その中から一番観たいと思ったのが本作だった。


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久々にこんなストレートな恋愛映画を観た。
センスのいい文科系アイテムもキワドいオタクキャラもゲイも出て来ない、
いたって普通の若い男と女が出会って恋愛するだけの話。
今時そんなストーリーで2時間持つのかって感じだけど、
そのシンプルな話を夢中で追いかけてる自分がいた。

ひと言で言っちゃうと
イギリス人の女性とアメリカ人男性の遠距離恋愛の話なのだが、
監督の(元妻との)実体験によるストーリーと、
主演の男女の即興による台詞や演技がとにかくリアルで、
作り手の衒いやあざとさが全く感じられない。
人を本気で好きになった時の楽しさや不安や切なさを
ただただ丁寧に、繊細に描いている。

観賞後の切なさったらなかった。
恋愛はつくづくタイミングが大事だなと思う。

2011年にサンダンス映画祭で審査員大賞を受賞した作品。
日本では未公開だったが、先月DVDが発売されたとか。
お薦めです。


『ウィズネイルと僕』


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ジョージ・ハリスンのハンドメイド・フィルムス制作のイギリス映画で、
ブルース・ロビンソン監督の自伝的作品。

1987年制作の映画だが、
日本では1991年に吉祥寺バウスシアターで上映されたのみで、
その縁から、先日閉館したバウスシアターのクロージング作品に選ばれた。
どうせなら(色々と思い出深い)バウスシアターで観たかったけど、
時間がどうしても合わず、後日シネマート六本木で鑑賞。

売れない貧乏役者2人(ウィズネイルと僕)の
何とも冴えない日々をコメディ・タッチで描いただけの内容ながら、
フィルムの端々から強烈に漂う英国臭にむせ返りながら観た。
寒そうな曇天のロンドンの街並(本編中一瞬たりとも晴れのシーンがない!)、
ツイード・コートのファッション、シェイクスピアの台詞、
牧歌的な丘陵地帯、ビートルズやジミヘンの音楽…。

時代背景は1969年。
アメリカが60年代の終焉を描いた映画は何本も観たような気がするが、
イギリスがあの華麗なスウィンギング・ロンドンの終末を描くと
こんなにもブラックな悲喜劇になるのかと驚いてしまう。

ポール・マクガン演じる「僕」が、
仕事を見つけ、髪を切り、ウィズネイルに別れを告げて
ボロアパートを出ていくラストシーン。
その先には堅実な70年代があり、彼は映画監督になって
後に『キリング・フィールド』の脚本を書き上げる。
気になったのは、残された飲んだくれのウィズネイルだ。
彼はその後どうなったのだろう?
(『真夜中のカーボーイ』のラッツォの最期が頭をよぎる)

プロデューサーがジョージ・ハリスン、
プロダクション・コンサルタントという肩書きでリンゴも参加、
ジョニー・デップが「完璧な映画」と言い、
ズーイー・デシャネルが「That's A Great Movie!」と賞賛した本作、
ようやく、ようやく観ることが出来た。

そして更なる驚きが…。
田舎紳士風のスコアが心地良いなと思っていたら、
本作の音楽をデヴィッド・ダンダスが担当していたのだ。
デヴィッド・ダンダスはブルース・ロビンソンと演劇学校の同期だったらしい。

強烈な英国臭の元がここにもあったのだ。


今日のBGM:「Jeans On」by David Dundas

↑映画とは関係ないけど、デヴィッド・ダンダス唯一のヒット曲
(1976年に全英3位、全米17位)で、すごく好きな曲。

↓珍しい日本盤シングルのキャッチ・コピーには
“イギリスの若き貴公子”とあるけど、
実際スコットランドの有名貴族ダンダス家の末裔らしい。


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posted by Good Time Graphicker at 19:59| 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月05日

Mood Indigo

最近観た映画《Part.1》

『ウォールフラワー』


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観たかったのにスルーしてしまった2本の映画が、
たまたま早稲田松竹で2本立て上映をしていたので観に行ってきた。
その1本目が『ウォールフラワー』。

文学や映画では
『ライ麦畑でつかまえて』『ハロルドとモード』『卒業』、
音楽ではデヴィッド・ボウイやザ・スミス、ニック・ドレイクなど、
耳に引っかかるアイテムが本編中にこれでもかと引用されている割には
あんまりノレなかったなぁ。

内気で非モテ男子高校生の主人公が
自分を理解してくれる友人たちと出会って、
結構いい感じの青春を送れましたって話なのだが、
ラストに突然小さい頃のトラウマ話が暴露される。
でもそれが、それまでの話に何の感慨もプラスしないので、
「はあ、そうでしたか…」とぼんやり納得しただけだったり。

『あの頃ペニー・レインと』的な、『(500)日のサマー』的な、
(どちらの雰囲気にも似た瞬間がちょっとあったりする)
素敵文科系映画を作りたいっていう意気込みは伝わって来るんだけど、
どこか借り物風で、本質的な物語ではないような気がした。
それはもはや自分が高校時代からかけ離れてしまった
歳のせいだけではないと思うんだけど…。

原作者のスティーヴン・チョポスキーが自ら脚本・監督してるので、
やりたいことは思いっきりやり切ったはず。
ならば原作と映画の違い云々の問題ではなく、
もともとこういう作品なのだろう。

『ハリー・ポッター』以外のエマ・ワトソンが見られて新鮮だった。


『ムード・インディゴ〜うたかたの日々〜』


Mood Indigo.jpg


早稲田松竹での2本目。

恐らく本作を観に行った人は、
ポリス・ヴィアンの原作(『日々の泡』)好きか、
ミシェル・ゴンドリー好きかのどちらかだと思うんだけど、自分は後者。
『エターナル・サンシャイン』や『僕らのミライへ逆回転』を観て以来、
映像作家としてのミシェル・ゴンドリーが大好きで、
その新作というだけで前から気になっていた。

これ、原作の世界観を知ってるか知ってないかで
受け取り方が全然違うと思う。
自分は原作を読んでいないので、
ファンタジックかつグロテスクな映像と物語に大きな衝撃を受けた。
(恐ろしいことに、奇想天外な世界観はほとんど原作に忠実だとか!)

ガジェット好きなミシェル・ゴンドリーの
面目躍如という感じの映像がとにかくスゴくて、
まるでシュールなミュージック・ビデオを
130分間観させられてるみたい。
「とんでもない映像を観た」と思う反面、
逆に「物語」としてのポジティヴなカタルシスは
ほとんど無かった気がする。

原作のストーリーがそうなのだから
それに文句を言うのはナンセンスかも知れないけど、
冒頭の恋愛の幸福感が泡のように消え失せていき、
後半は汚濁の世界となる展開がとにかく観ていて辛過ぎた。
(予定調和の幸せ物語に飽き飽きしているくせに、
救いのないものを突きつけられると不満に思う
自分の身勝手さに呆れてしまうが…)

「人生で一番大切なものは綺麗な女の子との恋愛とジャズだけだ」
というポリス・ヴィアンの言葉に敬意を表して、
「綺麗な女の子」と言うにはオドレイ・トトゥは
歳を取り過ぎていた気がするという不満と、
デューク・エリントンの役で
オーガスト・ダーネル(!)が出演してたことの喜び、
このふたつの件を付け加えておきたい。


次回も最近観た映画レポート、続きます。


今日のBGM:「Lowdown」by Boz Scaggs

↑『ムード・インディゴ〜うたかたの日々〜』で、
ロマン・デュリスとオドレイ・トトゥの新婚旅行のシーンでかかる曲。
100年前なのか近未来なのか、時代設定が丸っきり分からない本作で、
突然この曲がかかる違和感たらなかった!



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