発行している『ROCK54』というフリーペーパーで、
レコード・ジャケットについてのコラムを連載させて頂いている。
ロック、ポップス、ジャズなどジャンルを問わず、
自分がカッコいいと思ったジャケットについて
デザイナー視点から好き勝手書いているのだが、
先日入稿した原稿では
マーヴィン・イスラエルとローリング・ユーテミーという
2人のグラフィック・デザイナーについて書いた。
この2人はアトランティック・レーベルで腕を競い合ったデザイナーで、
50年代中期から60年代初期のアトランティックのジャズやR&Bの
アートワークを多く手掛け、その優雅さと気品がある作風は
ジャズやR&Bアーティストの地位を向上させたと評価されている。
マーヴィン・イスラエルの後輩だったローリング・ユーテミーは
アトランティックの社内デザイナーとして70年代まで活躍したが、
イスラエルは60年代初頭にアトランティックを離れ、
NYのパーソンズ・デザイン・スクールの講師に就任した。
短い間だったがあの『ハーパース・バザー』のデザインも担当し、
ダイアン・アーバスやリチャード・アヴェドンといった写真家からも
大いに尊敬されたという。
僕がマーヴィン・イスラエルに興味を持ったのは、
『ジャケガイノススメ』という本を作った時に
クリス・コナーの『He Loves Me, He Loves Me Not』という
アルバムのジャケットに一目惚れしてからだ。
まずは写真選択のセンスの良さ、
その写真を引き立てるために一切でしゃばらないシンプルなデザイン、
特に控えめだが的確なフォントの使い方には目を見張るものがある。
アトランティックの創始者アーメット・アーティガンは
かなりのアート・フリークだったそうだが、
音楽以外のあらゆる面で美的感覚の優れた人だったんではないか。
そんなことをすぐに想像できるほど、
アーティガンのもとで生み出された
マーヴィン・イスラエルの作品は素晴らしいものが多い。
(以下、全てマーヴィン・イスラエルが手掛けたジャケット)




今日のBGM:「Train And The River」by The Jimmy Giuffre 3
↑映画『真夏の夜のジャズ』のオープニング・シーンを飾った
ジミー・ジュフリー・スリーもアトランティック・レーベル所属。
アトランティックというと熱いソウルのイメージだが、
50年代にはこんなにクールなジャズのアルバムをたくさん出していた。
↓この「Train And The River」が収録されているアルバムも
マーヴィン・イスラエルのお仕事。
