『season 3』の最終話では
1963年11月のケネディ暗殺直後のことが描かれていたが、
『season 4』はそのちょうど1年後の64年のクリスマス・シーズンの
エピソードから始まった。
主人公のドン・ドレイパーが、
離婚して離れて暮らす娘のためにビートルズのレコードを買ってあげるよう
秘書に頼んだりするような、64年ならではエピソードについニヤついてしまう。
一昨日の第3話の放送では
ドンがクリスマス休暇を取って、
彼の過去を知る唯一の女性アンナに逢いに
西海岸に行くエピソードが描かれた。
アンナとその姪のステファニーと一緒にクラブに踊りに行くシーンでは、
ジャン&ディーンの「Sidewalk Surfin」が流れた。
まさに1964年暮れの選曲!
大学生のステファニーはジャン&ディーンに大喜びだが、
すでに若くないドンとアンナは最新のヒット曲に腰が引けて踊れない。
その次に流れるのがパティ・ペイジの「Old Cape Cod」で、
懐かしいナンバーにドンとアンナは「この曲ならば」と
自然と体を寄せ合って踊り出す…。
「Sidewalk Surfin」は
ビーチ・ボーイズの「Catch A Wave」の替え歌なので、
このシーンでの選曲はビーチ・ボーイズ〜パティ・ペイジという流れになる。
このエピソードを書いた『MAD MEN』の脚本家は、
パティ・ペイジの「Old Cape Cod」が歌詞の中に引用された
ビーチ・ボーイズの(というかブルース・ジョンストンの)
「Disney Girls(1957)」を当然意識してこのシーンを作ったのだろう。
「Sidewalk Surfin」と「Old Cape Cod」のたった2曲で、
若い世代と旧世代の対比、西海岸らしい空気感、
そしてアメリカが引き返せないところまで足を突っ込もうとしている
時代の緊迫感みたいなものまで表していて、
とても印象的なシーンだった。
NYに戻ったドンは
同僚を誘って大晦日の夜の街に繰り出すのだが、
たまたま入ったライヴ・ハウスではレニー・ブルースみたいな
辛口のスタンダップ・コメディアンが出て来たり、
新人フォーク・シンガーが「The House Of The Rising Sun」を
歌ったりする。
1965年の幕が開いて、その回は終わった。
ところでこの『MAD MEN』というドラマ、
「全然面白くない」と言う人もたくさんいるみたいだけど、
言ってみればアメリカの世俗史、芸能史みたいな側面もあるわけだから、
個人的には物語とは関係ないところでも十分に楽しめちゃうのだ。
さて、1965年はどんな曲がかかるのでしょうか。
今日のBGM:「Old Cape Cod」by Patti Page
↑1957年の古き良きアメリカの情景が描かれている名曲。
パティ・ペイジのダブル・トラックのヴォーカルには
何とも言えない気持ち良さがある。
「Tennessee Waltz」よりもこの曲の方が好きかな。

