2011年08月24日

Old Cape Cod

『MAD MEN season 4』が始まった。

『season 3』の最終話では
1963年11月のケネディ暗殺直後のことが描かれていたが、
『season 4』はそのちょうど1年後の64年のクリスマス・シーズンの
エピソードから始まった。

主人公のドン・ドレイパーが、
離婚して離れて暮らす娘のためにビートルズのレコードを買ってあげるよう
秘書に頼んだりするような、64年ならではエピソードについニヤついてしまう。

一昨日の第3話の放送では
ドンがクリスマス休暇を取って、
彼の過去を知る唯一の女性アンナに逢いに
西海岸に行くエピソードが描かれた。

アンナとその姪のステファニーと一緒にクラブに踊りに行くシーンでは、
ジャン&ディーンの「Sidewalk Surfin」が流れた。
まさに1964年暮れの選曲!

大学生のステファニーはジャン&ディーンに大喜びだが、
すでに若くないドンとアンナは最新のヒット曲に腰が引けて踊れない。
その次に流れるのがパティ・ペイジの「Old Cape Cod」で、
懐かしいナンバーにドンとアンナは「この曲ならば」と
自然と体を寄せ合って踊り出す…。

「Sidewalk Surfin」は
ビーチ・ボーイズの「Catch A Wave」の替え歌なので、
このシーンでの選曲はビーチ・ボーイズ〜パティ・ペイジという流れになる。
このエピソードを書いた『MAD MEN』の脚本家は、
パティ・ペイジの「Old Cape Cod」が歌詞の中に引用された
ビーチ・ボーイズの(というかブルース・ジョンストンの)
「Disney Girls(1957)」を当然意識してこのシーンを作ったのだろう。

「Sidewalk Surfin」と「Old Cape Cod」のたった2曲で、
若い世代と旧世代の対比、西海岸らしい空気感、
そしてアメリカが引き返せないところまで足を突っ込もうとしている
時代の緊迫感みたいなものまで表していて、
とても印象的なシーンだった。

NYに戻ったドンは
同僚を誘って大晦日の夜の街に繰り出すのだが、
たまたま入ったライヴ・ハウスではレニー・ブルースみたいな
辛口のスタンダップ・コメディアンが出て来たり、
新人フォーク・シンガーが「The House Of The Rising Sun」を
歌ったりする。

1965年の幕が開いて、その回は終わった。

ところでこの『MAD MEN』というドラマ、
「全然面白くない」と言う人もたくさんいるみたいだけど、
言ってみればアメリカの世俗史、芸能史みたいな側面もあるわけだから、
個人的には物語とは関係ないところでも十分に楽しめちゃうのだ。

さて、1965年はどんな曲がかかるのでしょうか。


今日のBGM:「Old Cape Cod」by Patti Page

↑1957年の古き良きアメリカの情景が描かれている名曲。
パティ・ペイジのダブル・トラックのヴォーカルには
何とも言えない気持ち良さがある。
「Tennessee Waltz」よりもこの曲の方が好きかな。


Old Cape Cod.jpg


posted by Good Time Graphicker at 04:43| TV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月29日

Jet

食事しながら『笑っていいとも!』を見ていたら
眠気が襲ってきてうつらうつらしてしまった。

番組は『ごきげんよう』に変わっていて、
今日のゲスト、吉本芸人のシルク姉さんが何やら話をしていた。

微睡みの中でぼんやりと聞いていたら、
その話のオチのあまりの衝撃度に飛び起きてしまった。

ちゃんと聞いていなかった前半部分をウィキペディアで補足しながら、
ここに書いてみる。

シルク姉さんがロンドンに留学していた時の話。
後に「非常階段」という漫才コンビを組む相方のミヤコが遊びに来て、
一緒にライヴハウスに行った。
カツアゲの被害に遭うのを恐れた2人は、持ち金を靴の中に入れていたが、
ライヴ中に汗で紙幣が溶けてしまった。
そのせいで帰りのタクシーを拾うことができず、
深夜に徒歩で留学先の家まで帰る羽目となってしまった。
そこに1台のリムジンが止まり、中から何とポール・マッカートニーが出て来て
「どうしたのか?」と聞かれたという。するとミヤコが機転を利かせ、
「日本から来てあなたをずっと待っていました」と言うと、
「スタジオを見学していくかい?」と誘われ、
その足でスタジオに行きレコーディングを見学したばかりか、
リンダに紅茶までご馳走になったという。

このことは当時、
イギリスの新聞にも「日本から来たラッキーガール」として
紹介されたらしい。
ちなみに見学した時に録音されていた曲はあの「Jet」だったとか!

いやぁビックリした。
過去に見た『ごきげんよう』の中で、一番驚いたオチ。
眠気が一気に吹っ飛んでしまった。

ちなみにウイングスがロンドンのAIRスタジオで
「Jet」を録音したのは1973年の10月頃。

チューリップのメンバーがアビイ・ロードでポールと面会し、
軽いセッションをしたのが1976年(『Speed Of Sound』制作時)。
もしシルク姉さんが本当に「Jet」のレコーディングを見たのであれば、
その3年も前に日本人でポールの録音を見学した人がいたということか!?

この話を聞いて、思い出したことがある。
1996年の9月にリヴァプールに旅行して
1週間くらい滞在していた時のこと。

ちょうどその時、リヴァプールのフィルハーモニック・ホールで開催される
「リヴァプール・オラトリオ」の100回目の公演に
ポールが出席することになっていて、小さな街がざわついていた。

滞在中に知り合ったリヴァプール在住の日本人から、
「ホールの楽屋用出口で出待ちして、日本からわざわざ来ましたと言えば
握手くらいできるかもよ」と言われたことを思い出す。

その時は「そんなバカな」と思い、
仕事の関係もあってその公演の直前にリヴァプールを発ってしまったが、
人生でポールに一番近づける可能性があったのは
あの時だったのかも知れないなぁ。


今日のBGM:「Jet」by Paul McCartney & Wings

↑この曲について、
「グランド・ポップ・コンフェクション(壮大なポップス菓子)」と
評したのは音楽評論家のデイヴ・マーシュ。
この言葉、自分の好きなタイプの音楽を完璧に言い表してる!


Paul McCartney & Wings.jpg


posted by Good Time Graphicker at 05:09| TV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年06月16日

And I'm At A Loss

今に始まったことではないが、
最近ゴールデン・タイムのテレビが面白くない。
せめて夕食の時間くらいは楽しませてよと思うのだが、
チャンネルを変えまくっても結局見ようと思う番組がなく、
最後は消してしまうことが多い。

先日、仕方なく見ていた『HEY! HEY! HEY!』で、
「カップ・ラーメンのCMソング特集」なる企画をやっていた。
音楽や歌に力が無い今の時代、過去の名曲を振り返る企画の多いこと。
ほとんどが80年代の曲ばかりで、
その中に大沢誉志幸の「そして僕は途方に暮れる」があった。

あら懐かしいなんて思って見ていたら、
最後に本人が登場、この曲を披露してくれてビックリ。
うーん、こういう懐かし系の歌番組に出てしまうんですね、と
ちょっと微妙な心境だったが、
ハスキーなハイトーン・ヴォイスは変わっていなく、
当時よりもフェイク多めの歌唱もまだ十分に魅力的だった。

確か日清カップヌードルのCMソング(1984年)だった。
大沢誉志幸は1つ前のシングル「その気]XX」で好きになっていたから、
バラードで勝負をかけてきたことに当時驚いた記憶がある。


大沢誉志幸.jpg


「そして」という接続詞に、
「途方に暮れる」と結ぶタイトルがヤケに新鮮だった。
作詞は銀色夏生。彼女の詞の斬新さは銀次さんのブログでも綴られていたけど、
当時高校生だった僕でも、日本の詞の新しい自由さに
何となく心がワクワクしたのを覚えている。

編曲は大村雅朗。
印象的なシンセのイントロは松武秀樹の仕事だったことを、
以前ロフトプラスワンで行われたこのイベントに参加した時に知った。

更にこの日のブログで、
トニー・マンスフィールドが日本のポップスに与えた影響は大きいんじゃないか
みたいなことを書いたけど、
この曲のアレンジなどもモロに(トニマンがプロデュースした)
キャプテン・センシブルの「Happy Talk」だ。

ほんわか幸せムードの「Happy Talk」と同じようなサウンドなのに
「そして僕は途方に暮れる」の方は
とても冷たいヒンヤリとした感触がして、
昔からそこが好きだった。


今日のBGM:「ボーンフリー・スピリット」by ロブバード

↑日清カップヌードルのCMソングと言えば、個人的にまず思い出すのがこれ。
1980年当時、テレビから流れてきて一発で気に入ってシングルを買った。
この曲を覚えている人に今まであまり出会ったことがないのが寂しい。
(唯一、杉(真理)さんのマネージャー氏が「懐かしぃ〜」って言ってくれた)

ロブバードのLPって聴いてみたいんだけど、なぜかあんまり見かけない。
以前、阿佐ヶ谷の中古レコ屋(ゴーゴー・レコードかサン・サン・レコード)
で見かけた時に買っておけば良かったかなぁ。


Rove Bard.jpg


posted by Good Time Graphicker at 05:17| TV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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