2012年11月08日

Talking About Melody

『佐野元春のザ・ソングライターズ』の星野源の回を観た。

今更だけど、この人は面白い詞を書くなぁ。
今の時代の空気感にすごく合った表現者だとも思った。
皆が聴くのも分かる気がする。

ところでこの番組もシーズン4を迎えたが、
4年目の今シーズンから密かに期待していたことがあった。

それは言葉ではなくて、
“メロディ”をテーマに対談をして欲しかったということ。
毎回、日本で指折りのメロディ・メイカーをゲストに呼んで、
作曲方法や、自分の書くメロディがどこから影響されたかを
佐野さんとの対談で語って欲しいのだ。

佐野元春は詩人であるが、
屈指のメロディ・メイカーでもあるわけだし、
何よりも『ザ・ソングライターズ』というタイトルの番組で
詞のことだけしか語らないなんてあまりにも片手落ちだ。

もちろん、“メロディを語ること”がテレビ向きじゃないことは
十分に理解している。
コード進行や音楽理論の話も多くなり、
素人には分からない難しい内容になってしまうかもしれない。
絶対的な“言葉”と比べると随分と曖昧な、
実態のない“メロディ”のことをいくら紐解いても、
宙をつかむような話になる可能性だってある。

それに“良い詞”にはすぐに共感できるが、
“メロディ”に対しては、聴いた人の世代や経験や理解度などによって
それぞれの反応があって、共通した感情を持ちにくいということもある。
すぐに答えが出ない曖昧なことほど、
メディアと相性が悪いものはない。

それでもいつか果敢に挑戦してもらいたい。

自分は小学生の時から洋楽を聴き始めて、
歌詞の意味なんて分からずに元気づけられたり嬉しくなったりした。
もちろんサウンドやリズムによっても感情を動かされたと思うが、
生ギター1本で歌われたフォーク・ナンバーでも
感動してたりしていたわけだから、
やはり主にメロディに感化されていたのだと思う。

訳もなく胸が切なくなったり、
意味もなく勇気が沸いてきたり、
押さえ切れないほどワクワクさせてくれた
あれやこれやのメロディが、
どこからやってきて、どうやって作られているか、
まだ自分は全く理解できていない気がする。

その秘密を知りたくてしょうがないのだ。


今日のBGM:「At Seventeen」by Janis Ian

↑小学生の低学年くらいの頃から、
何となく“メロディだけで”好きだった曲。
聴くだけでいつも胸が締め付けられるような思いをしていたから
てっきり悲しい失恋の歌だとずっと思っていたけど、
大人になって歌詞の意味を調べたら
恋すら経験できない不器用で地味な女の子の歌と知って驚いた。
(そしてますますこの歌を好きになった)


Janis Ian.jpg


posted by Good Time Graphicker at 05:40| TV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年10月24日

Going My Home

好きな映像作家、是枝裕和が脚本・監督を担当したドラマ
『ゴーイング マイ ホーム』を観ている。

まだ2回しか放送されていないが面白い。
タイトルから思い浮かぶような
ありきたりのホーム・ドラマかと思ったら大間違いで、
初期宮崎アニメのようなファンタジー色が濃厚な、
不思議な展開に心地良い興奮を覚えている。

魅惑的なストーリーもさることながら、
役者たちの自然な演技はさすが是枝演出。
特に16年ぶりの連ドラ出演なのに全く気負いのない
超ナチュラルな山口智子の演技が素晴らしい。

その夫を演じる阿部寛のプライドが高いくせに小心者の情けなさと
9歳の娘の小生意気さの対比も笑えるし、
宮崎あおいの清楚な田舎ガールぶりも
チョイ役で笑いをとる阿部サダオもバカリズムも、
みんなキャラが立っていて実に魅力的。

すごくリアルだと思ったのは、
阿部寛が勤めるCM制作会社の雰囲気。
せっかく苦労して作った映像をスポンサーの鶴のひと声で
やり直させられる制作会社社員の悲哀を描いたシーンなどは、
元CM制作会社勤務だった自分としては(笑えない)可笑しさ。

あと阿部ちゃんの姉を演じるYOUの、
弟をなじる演技もリアル過ぎ。
いくつになっても姉弟の言い争いってこんなもんだよなぁと、
これまた身につまされるように苦笑い。
(なんでどこも姉貴ってこんなに偉そうなんだ!)

ドラマを観ること自体も久々だが、
観ながら声を出して笑ったのなんて何年ぶりだろう。

映画監督が連続ドラマの脚本・監督を担当するなんて異例のことだが、
もはや誰もドラマなんて観ていないこの時代だからこそ、
制作者は視聴者や時代に媚びずに、真の新しさ、面白さを
自由に追求していって欲しいと思う。


今日のBGM:「Wonderful Life」by Black

↑以前NHKで放送された『ミュージック・ポートレイト』の
是枝裕和とYOUの対談の時に紹介されたナンバー。
是枝監督の長編2作目『ワンダフルライフ』(個人的に大好きな映画!)は、
この曲がヒントになったと自ら語っていた。


Black.jpg


posted by Good Time Graphicker at 04:32| TV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月07日

Music Portrait

NHKで放映している
『ミュージック・ポートレイト』という番組をご存知の方は
どのくらいいらっしゃるのだろうか。

「あなたの人生で大切な音楽を10曲選んで下さい」
という質問と共に展開されるトーク番組で、
2人のクリエイターがそれぞれ選んだ10曲を持ち寄って
今までの人生を振り返り、これからの人生をも語り合うという、
音楽好きにとっては無視できない内容。

かなり前、恐らくまだレギュラー化していなかった時に、
松任谷正隆氏と姜尚中氏がゲストだった回を偶然見て、
とても面白い番組だなと思った。
その後は全くチェックしていなかったが、
調べてみたらどうやら今年4月から正式にレギュラー番組として
スタートしていたみたい。

先週と今週の2回の放送では、
山本耀司×高橋幸宏という何とも興味深いゲストだった。

ファッション界と音楽界という違う世界で活躍していながら、
かなり近い感性でお互いをずっと意識していた2人。
実際に今までにコラボした仕事も多く、
同じような人生の浮き沈みも体験している。

2人が選んだ音楽は、
子供の頃に影響を受けたものとして
ヴェンチャーズなどカブった洋楽もあったが、
人生の後半に差し掛かった現在の、そしてこれからの人生に向けての選曲は
全く違うものになっていた。

山本耀司氏が最近心打たれた音楽として
長渕剛や中島みゆきの曲を挙げていたことにも意外な面白さがあったが、
幸宏氏が選んだ最後の3曲にとにかくシビレてしまった。

その3曲とは、
ランディ・ニューマン「I'll Be Home」
サイモン&ガーファンクル「America」
プロコル・ハルム「Pilgrim's Progress」

ランディ・ニューマンの「I'll Be Home」は
震災後の自分の心情に響く曲として、
サイモン&ガーファンクルの「America」は
世の女性に対して捧げる歌として、
そしてプロコル・ハルムの「Pilgrim's Progress」は
人生に幕を下ろす時に聴きたい曲として選んでいた。

この3曲はどれも本当にいい曲でありながら、
幸宏氏のちょっとした屈折とシャイネスと、
そして究極のロマンティシズムを見事に表していると思った。

好きな音楽とは、
その人そのものをこうも表すものなのだろうか
と、改めて驚いてしまう。

ちなみに次回のゲストは松田聖子と藤井隆。

こちらも必見ですな。


今日のBGM:「Pilgrim's Progress」by Procol Harum

↑名盤『A Salty Dog』のラスト・ナンバー。
キース・リードの歌詞は相変わらず難しくてよく分からないけど、
曲自体は本当に素晴らしいと思う。
(実はプロコル・ハルムのファン歴、長いんです)


A Salty Dog.jpg


posted by Good Time Graphicker at 05:48| TV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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