2014年04月01日

The Covers

NHKのBSプレミアムで始まった『The Covers』という新番組。

旬なアーティストが昭和の歌謡曲を
生演奏でカヴァーするという歌番組で、
昨年の秋頃に特番でやったのを観て面白かったので
レギュラー化するのを待っていた。
(もし自分がNHKの社員だったら企画してたような番組!)

確かその特番の1回目に、
ゲストの斉藤和義が沢田研二の「ダーリング」と
梓みちよの「二人でお酒を」をカヴァーしたのだが、
それがすごく良かったのだ。

ゲストの選択と(制作サイドのセンス)、
そのゲストが選ぶ歌の選択(ゲストのセンス)がふたつとも的確ならば、
その回は絶対面白くなるはず。
そういう意味で斉藤和義と「ダーリング」という組み合わせは完璧だった。

そして昨夜放映された、
記念すべきレギュラー化第1回目のゲストは
クレイジーケンバンドの横山剣!

それだけでも嬉しいのだが、
剣さんが選んだのは堺正章の「さらば恋人」と、
森進一の「冬のリヴィエラ」という
これまた完璧な選曲だった。
ただ「好きな曲」というだけではなく、
声質やキーなども考慮に入れた、
自分が歌えば確実に映えることを知り抜いた
素晴らしいセレクトだったと思う。

剣さんが歌う「さらば恋人」はちょっとフェミニンな空気を漂わせ、
逆に「冬のリヴィエラ」では男汁をジュワッと滲ませた熱い歌唱が、
オリジナルにはない色気を醸し出していた。

剣さんはこの2曲を選んだ理由として、
曲を作った筒美京平と大瀧詠一への熱い想いも語っていたが、
特に大瀧さんの話が面白かった。
中学3年の時に三ツ矢サイダーのCMを見ていいなと思い、
スポンサーの会社に直接電話して
「自分が作った曲も使って欲しい」と直談判したとか。
「そういうことは広告代理店に言ってください」と言われ、
すぐに代理店にも電話したというからスゴい(恐るべき15歳!)。

「サイダーの会社に電話して…」のくだりで、
てっきり「それが大瀧さんの音楽との出会いでした」
みたいな話になるのかと思ったら、
自分の曲の売り込みの話だったとは!

でもその後に大瀧さんについて、
「マニアックなことを極めながら王道でも結果を出した人。
そこがかっこいいですよね」
としっかり評価もしていた。


今日のBGM:「愛の戯れ」by 平山三紀

この番組ではゲストのオリジナル曲も1曲だけ歌われるのだが、
今回披露されたのがクレイジーケンバンドの「横顔」だった。
そのフィリー・マナーなサウンドを聴いて個人的に思い出したのが、
↑平山三紀の「愛の戯れ」という曲。
筒美京平の作・編曲によるフィリー歌謡の快作で、
こういう曲に剣さんはことごとく影響されてるなと。


平山三紀.jpg


posted by Good Time Graphicker at 04:57| TV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月10日

The Best Divorce

『最高の離婚 Special 2014』を観た。
やっぱりこのドラマは面白い。

連ドラが終わって1年後くらいにやるスペシャル・ドラマって
大抵付け足し感が拭えないけど、
今回のドラマは連ドラのテンションをちゃんと維持してたし
(いや1.5倍くらい高かったかも)
ストーリーもしっかり次のステージに移っていて、
俳優陣もスタッフも作品をとても大事にしてる感じが伝わってきた。

連ドラ放映時は視聴率も話題もそんなに盛り上がってなくて、
毎回楽しみに観ていた自分は、世間の反応に物足りなかった。
でもその後の反響がすごくて続編への期待も多くなってきたとか。
やはり本当にいい作品を作れば、多くの人にちゃんと
伝わるものだなぁと(当たり前のことに)嬉しくなる。

何がそんなに面白いのかと言えば、
2組のアラサー夫婦のキャラクター造形に尽きる。
特に瑛太と尾野真千子が演じる濱崎夫婦の性格、言動、会話…
この2人に関する何もかもが強烈に面白い。
面白いって言っても単に笑えるってことだけじゃなくて、
今の時代の空気に合ったリアルな面白さがある。

例えば2人の夫婦喧嘩にしても、
瑛太の相手を攻める身勝手で屁理屈な言葉のセンスに笑っていると、
尾野真千子が急に半ベソをかきながら、
あまりにも真っ当で痛烈な反論を繰り出してくる。
そのシリアスさに、さっきの笑いも一瞬にして凍り付くのだ。

そんな2人のやりとりの節々に、
今を生きる30歳くらいの男女(や夫婦)が抱える切実な問題が
しっかりと絡み付いていたりするから、
観てる方は笑ったり泣いたり考え込んだりと、とにかく忙しい。

そう言えば、連ドラ放送時に話題となった
瑛太の「ジュディマリ便座カバー」発言にしても、
すごくリアルなセリフでちょっとショックだった。
(一応、観てなかった人のために説明すると、
瑛太の元カノの真木よう子が昔から大切にしていた
JUDY AND MARYの「クラシック」という曲に対して、
瑛太が“安っぽい花柄の便座カバーみたいな音楽だ”と言った事件。
そのせいで瑛太は真木に“死ねばいいのに”となじられる)

人の価値観には上も下もないはずなのに、
日常の会話の中で僕らはついこういう発言をしてしまいがちだ。
誰かにとっては便座カバーみたいな音楽でも
誰かにとってはそれが生きる力となっているという、
すごく当たり前で重要な真実を突きつけられたような気がして
ハッとしてしまった。

瑛太の、こういう自分の価値観に疑いのない感じとか、
逆に他人の(自分とは違う)価値観を想像・受容できない態度とかは、
昨今のコミュニケーションに関するあらゆる問題の
とても大きな誘因になっている気がする。
(価値観の違いをこういう身近なエピソードに置き換えた
脚本家・坂元裕二の感性は素晴らしいと思う)

ところで、
今回のスペシャル・ドラマはハッピーエンドではなかった。
『最高の離婚』というタイトルのドラマだから、
復縁したら話が続かなくなるという意味では、
離婚したままというのがドラマ的に正解だとしても、
ちょっと予想外で終わった後に呆気にとられてしまった。

でもこれはもしかしたら、
更なる続編への伏線ではないのか。
そうだとしたら嬉しい。

自分の中では、今でも目黒川の桜並木の辺りに行けば、
相変わらず瑛太と尾野真千子の濱崎夫婦が
ドタバタやってると思っていたいだけなのだが…。
(いいドラマとは、必ず登場人物たちが
実際に存在してるんじゃないかと思えるものなのです)


今日のBGM:「目を閉じておいでよ」by バービーボーイズ

↑濱崎夫婦が大晦日に嫁の実家に帰った途端、
親戚一同のカラオケ大会で歌わせられる曲。
男女デュオの掛け合いソングとしても、
その後の夫婦に巻き起こる波乱を予感させる歌詞にしてみても、
いやはや完璧な選曲だった。


目を閉じておいでよ.jpg


posted by Good Time Graphicker at 04:26| TV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月30日

Don't Know What's Normal

湘南の音楽仲間Sさんに薦められて観始めたドラマ
『まほろ駅前番外地』が面白い。

もともと直木賞を受賞した三浦しをんの
『まほろ駅前多田便利軒』という小説があって、
それが2011年に映画化され、
更に続編のドラマ『まほろ駅前番外地』が
今年初めにテレ東で放映された。
自分が観ているのは、BSジャパンで日曜の夜に放映されている
その再放送。

色々と話題となっていたみたいだが、
その存在を今の今まで全く知らなかった。
ので、もちろん原作も映画も未体験。
ドラマだってまだ2回しか観ていない。

それだけでハマってしまった。

便利屋を営む二人の男(瑛太と松田龍平)の物語なのだが、
70年代にショーケンや松田優作が出演していたバディ物の青春ドラマと
決定的に違うのは、その恐ろしく冷めた空気感。
物語や設定のテイストは何となく70年代風なのに、
主役2人のやる気の無さ、低体温感がすごく今の時代を象徴していて、
そのギャップが面白いと思った。

ドラマは原作には無いオリジナル・ストーリーだそうだが、
ゴールデン・タイムには放送できないようなヤバめの話も多そうで
そこもハマった理由。
(一昨日放映された第4話では、股を広げた裸の女性の蝋人形を
始末して欲しいという依頼が来る。その蝋人形が作られた理由というのが、
まるで昭和のエロ小説みたいなグロい話ですごかった)

小さい頃に『探偵物語』を夢中で観ていたウチら世代のスタッフが、
(現に演出の大根仁は自分とピッタリ同い年)
松田優作の息子を使ってあの時代の枠組みだけを再利用して、
中身は今の時代の虚脱感、倦怠感みたいな空気を強烈に漂わせる…。
作り手のそんな狙いがビシバシ感じるのだ。

このドラマが月曜夜9時みたいな時間帯で放映されて
視聴率25%くらい取ったら、
テレビというメディアもまた面白くなりそうなのに。


今日のBGM:「まともがわからない」by 坂本慎太郎

↑エンディング・テーマ曲。
ドラマの空気感と気持ち悪いくらいリンクしてて、
最高としか言いようがない。
しかもSHOGUNの感じを今の時代でやったらこんな曲になりそう、
とも思った。


posted by Good Time Graphicker at 04:48| TV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする