2013年04月06日

Django Unchained

『ジャンゴ 繋がれざる者』を鑑賞。


Django Unchained.jpg


黒人の奴隷問題をマカロニ・ウェスタン調で描いたタランティーノの新作。
『デス・プルーフ in グラインドハウス』以降の調子の良さを
本作でも維持していて、2時間45分の長丁場を全く苦にせず楽しめた。

マカロニ・ウェスタン・ファンの友人は
『続・荒野の用心棒』(原題「Django」)のリメイクかと
一瞬心躍らせたらしいが、本作は純然たるオリジナル作品。
もちろんインスパイアはあらゆる映画(『マンディンゴ』とか)から
受けており、過去の様々な音楽をサンプリングして
今時の新しいトラックを作ってしまうDJのような制作スタイルは、
数年前に西部劇『トゥルー・グリット』を丸ごとリメイクした
コーエン兄弟とはまた違った姿勢であり、
タランティーノの真骨頂だと思う。

アメリカの暗黒史である奴隷問題を扱った映画ではあるが、
歴史に忠実に描いているわけでもなくて、
その(ある意味)不真面目なエンタメ精神が
いかにもタランティーノらしくていいなと思う。
現に映画の中で衝撃的な場面のひとつだった、
屈強な奴隷同士を相手が死ぬまで戦わせるという奴隷主のゲームについては、
過去の歴史的文献にそんなことをしていたという記述はないらしい。
また、本作にはKKKの元祖と思われる覆面集団が登場するが、
随分と長い尺を使ってわざわざ小バカにしたような描き方をしてる。
そこら辺の演出にも、斜め目線のタランティーノ節が炸裂してて
すごく面白かった。

ジャンゴを演じたジェイミー・フォックスもカッコ良かったが、
前作『イングロリアス・バスターズ』で衝撃のナチ将校を演じた
クリストフ・ヴァルツが今回も素晴らしい存在感。
ジャンゴを雇う賞金稼ぎのドクター・キング・シュルツ役だが、
ドイツ系という設定がストーリーに上手く絡んでいて、
タランティーノは最初から完全にこのヴァルツをイメージして
キャラ作りをしているのが分かる。
あとレオナルド・ディカプリオの悪役振りもサマになってた。
歳を重ねてきてこういうヤクザな面も自然と出せるようになったのかな。
ここ最近のディカプー映画で一番良かったかも。

今回も(ヒッチコックばりに)タランティーノ自身が出演してて、
その役のオチの付け方に大爆笑。
元ネタ作品『続・荒野の用心棒』の監督だったフランコ・ネロの
カメオ出演には全く気付かなかったことが悔やまれる。
(っていうか、そんなことに気付く人いるの?)

でも考えてみれば、
ここ最近のタランティーノ映画って
過去にものすごい仕打ちを受けた主人公が敵に復讐するという
分かりやすい勧善懲悪の物語ばかり。
そういったアゲアゲ系の話の方が
彼の演出が一番冴えるのかも知れないけど、
もうそろそろ違うテイストの作品を観てみたい気がする。


今日のBGM:「I Got A Name」by Jim Croce

↑今回も古今東西の色々な音楽が使われていたけど、
個人的に一番印象的だったのはこの曲。
ジャンゴがドクター・キング・シュルツに正式に雇われ、
2人で賞金稼ぎの旅に出発するシーンでかかった
ジム・クロウチの「I Got A Name」。
「こんな俺にだって名前はあるぜ」という歌詞が
物語のシーンとシンクロして、感動的な使われ方をしていた。

調べてみたら、
『ラスト・アメリカン・ヒーロー』(1973年)の主題歌で、
作曲はチャールズ・フォックスなんですね。


posted by Good Time Graphicker at 04:44| 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月21日

Searching For Sugar Man

『シュガーマン 奇跡に愛された男』を観た。


Searching For Sugar Man.jpg


ロドリゲスというシンガーの数奇な運命を追った音楽ドキュメンタリー。
サンダンスやアカデミーで賞を穫って話題になっているので、
色々なところで語られているはず。
(なので内容はここでは詳しく触れない)

タイトルなどのグラフィックが美しかったり、
アニメーションを使用したりするような映像センス、
ミステリーをひとつひとつ解き明かしていくような構成や、
もちろんその果てにある劇的な展開などにも心打たれたが、
そういった映画的なことよりずっと感動したのは
ロドリゲスの音楽そのものだった。

映画館で体験する音楽は2、3割増しで良く聴こえるのだけど、
それを差し引いても、詩、メロディ、サウンドも含めて
彼の音楽の全ての要素が胸に迫ってきて、
上映中興奮しっぱなしだった。
映画では何曲も彼の歌が流れるのだが、
フェイドアウトして物語に戻ってしまう度に
「ああ、もっと聴かせてよぉ」と心の中で叫んでしまったくらいだ。

街に暮らす孤独や辛さ、社会への痛烈なメッセージを
ホセ・フェリシアーノみたいな声で、
時には辛辣に、時には叙情的に歌う。

黒っぽくてファンキーな曲もあるが、
(南アフリカではデビュー・アルバム『Cold Fact』からの
そういうタイプの曲がウケたのだろう)
僕は2ndアルバムからのSSWっぽい曲の方がグッときた。
ストリングスを多用した甘いアレンジが
歌詞の陰影を強くして、とても切なく聴こえたから。

ロドリゲスの音楽性の質の高さは、
当時のレーベルのサセックスがお金をかけてレコーディングしてる
ことからも分かる。たぶん相当期待していたんだろう。
驚くほどしっかりとしたアレンジとサウンドで、
これがアメリカで全く売れなかったというのが本当に不思議。

1960年代のプロテスト・フォークには遅く、
1970年代のニュー・ソウルには早かったから。
受け入れられなかった理由をそう分析してる文章を読んだが、
時代のタイミングを少し逃しただけで
これだけの才能が埋もれるものなのだろうか。

ロドリゲスは今、ツアーに明け暮れているらしいし、
新作の予定もあるという。
この21世紀の時代に聴かれるために彼の音楽は長い間
埋もれていたのかもしれない。

サントラは絶対買うにしても、
2ndアルバム『Coming From Reality』のアナログ盤が
どうしても欲しい。


今日のBGM:「Cause」by Rodriguez

↑1971年リリースのアルバム『Coming From Reality』から。
映画の中で流れた曲で一番感動した。
クリスマスの2週間前に失業した男の物語が、
まるでジミー・ウェッブの曲みたいな甘いアレンジで歌われる。


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posted by Good Time Graphicker at 06:16| 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月08日

A Musica Segundo Tom Jobim

一昨日は湘南の音楽仲間Sさんに誘われて、
映画『アントニオ・カルロス・ジョビン』を観に行ってきた。

現在、角川シネマ有楽町で開催されている
『大人の音楽映画祭』という企画の中の1本で、
日本初上陸ということで以前から気になっていた作品だ。


A Musica Segundo Tom Jobim.jpg


これが素晴らしい映画だった。
観る前はてっきりジョビンの生い立ちや作品を追った
普通のドキュメンタリー映画とばかり思っていたが、
ナレーションや解説のテロップは一切なく、
ただひたすら世界各国の歌手やグループがジョビンの名曲を歌い
演奏するシーンのみで構成されていたのだ。
「良い音楽に解説などいらない」という
制作者の潔い姿勢が伝わってくるようだった。

今の時代なら、
YouTubeにアップされている映像を自分で繋いで編集していけば、
このくらいの作品はすぐに作れてしまいそうだが、
やはり大きなスクリーンと大音量で“体験”してしまうと、
圧倒的な音楽の魅力に飲み込まれてしまう。

60年代初頭のリオの空撮から始まって、
次から次へと登場する孤高のシンガーたち。
ピエール・バルーのギター弾き語りや、
動くミーナやシルヴィア・テリスは初めて観たし、
ゲイリー・バートンのヴィブラフォンの演奏技術には驚愕。
サミー・デイヴィス Jr.のスキャットは最高にイカしてたし、
サラ・ヴォーン、エラ・フィッツジェラルド、
ジュディ・ガーランドなどの大物シンガーの貫禄の歌声も堪能できた。
ジョアン・ドナート、ナラ・レオン、ガル・コスタ、
カエターノ・ヴェローゾ、ミルトン・ナシメントなどの
ブラジルのアーティストも多数出演していたし、
日本からもマルシア(!)と小野リサが登場。
もちろんその間々にジョビン本人の演奏や歌声もたっぷりと挟まれていた。

中でも一番感動したのは、
「Aguas de Marco」(邦題「三月の水」)を歌う
エリス・レジーナとジョビンの映像だ。
恐らく1974年のアルバム『Elis & Tom』制作時のものだと思うが、
大抵の曲は途中でフェイドアウトされてしまっていたのに
この共演はフル・コーラスで流れた。
マイク1本を2人で挟むようにして、
まるで恋人の語らいのように楽しく歌うエリスとジョビンが
とても印象的だった。

あとはやっぱりフランク・シナトラとジョビン。
ジョビンがギターを弾き、シナトラが煙草を吸いながら
「Garota de Ipanema」(邦題「イパネマの娘」)を歌う映像だが、
この2人の共演したレコードが大好きな僕はジーンと来てしまった。


Sinatra & Jobim.jpg


ところで、冒頭にモノクロの古い映像で
巨大な建築物が写ったがあれは一体何だったのだろう?
ナレーションが全く入らないので分からなかったが、
ジョビンが建築事務所で働いていた経歴を示すものだったのか、
リオのアントニオ・カルロス・ジョビン国際空港だったのか?
(でも空港には見えなかったな)

以前この日のブログ
「ボサノヴァと建築には面白い関係がある」と書いたことがあった。
ジョビンが若い頃に建築家を目指していたことや、
ホベルト・メネスカルが有名建築家の息子であったこと、
ボサノヴァが学生に浸透するきっかけを作ったと言われる
「第1回サンバ・セッション・フェスティヴァル」が行われたのが
リオの建築大学だったというような、
諸々の事実にとても興味があったからだ。

そう言えば、上記の「三月の水」の歌詞に、
梁、空間、棟上式などといった建築用語が多数登場することも、
ジョビンの感性を知る上でとても興味深い。


今日のBGM:「Aguas de Marco」by Elis Regina & Tom Jobim


Elis & Tom.jpg


posted by Good Time Graphicker at 05:34| 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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