2013年09月05日

French Movie Carnival

最近観た映画。
今回はフレンチ・ムーヴィー祭り!

『タイピスト!』

Typist.jpg


『アーティスト』はアメリカのサイレント時代のオマージュだったけど、
本作は50年代のアメリカ映画へのオマージュといった趣き。
監督のレジス・ロワンサルはかなりの古典映画マニアと見た
(しかも相当のアメリカかぶれ)。
タイピストが女性の花形職業だった古き良き時代の
総天然色な映像世界は個人的には大好物だけど、
あまりにもウェルメイドで屈託のないストーリー展開が
ちょっと退屈だった。
自分が19歳ならハマってたと思うけど…。

ヒロインのローズにタイプライターの早打ちをコーチする社長役の
ロマン・デュリス(こういう癖のある顔の男が主役なのがフランスっぽい)が
乗ってた小型車のデザインがすごく良かった。
あれは何という車なんだろう?


『最後のマイ・ウェイ』

Cloclo.jpg


フランク・シナトラで有名な「My Way」を作曲したことで有名な
フランスのポップ・スター、クロード・フランソワの伝記映画。
その「My Way」の原曲「Comme d'habitude」の歌詞が
凡庸な日常的世界観で驚いたけど、
(英語詞を付けたポール・アンカが素晴らしかったってことだ)
チビで顔も鼻もデカくて声も変なこの男がなぜ国民的歌手になって
10年以上も第一線を走っていけたのか、
映画を観終わっても全く理解できない。
(父親に認められたいと思いからくる膨大なエネルギーと、
独裁的なビジネス・センスだけであそこまで成功するもの?)
でも逆にその違和感が妙に引っかかって、
クロード・フランソワの音楽をちゃんと聴いてみようと思った。

劇中フランソワと恋に落ちるフランス・ギャルは
そこそこ似ていてキュートだったけど、
何回かニアミスするシナトラが全く似ていなかったのが残念。
ライヴ演奏シーンがあるオーティス・レディングは
めちゃめちゃ似てて最高だった。

日本にはなかなか伝わりにくい
フランスの“ザ・芸能界”が垣間見れて、
ポップス・ファンにはお薦めの音楽映画です。


『ノーコメント by ゲンズブール』

Gainsbourg.jpg


セルジュ・ゲンズブールのコメントのみで構成された
ドキュメンタリー映画。
ゲンズブールの40年に及ぶ活動歴を(本人の解説付きで)俯瞰できて
興味深かったけど、いかんせん時間軸に整合性がなかったり、
編集に抑揚がなかったりして、途中で何度も眠たくなってしまった。
それでも、女性に限らず同性をも引きつけるあの強烈な魅力の原因は
出自や容姿から来る根深いコンプレックスや
孤独や疎外感の裏返しだと判明したりして、
ゲンズブールという複雑な男を少し理解できたような気がした。

そしてもちろん、エンディングで流れた
女性コーラスが可愛いオールディーズ調の「La javanaise」
(ジュリエット・グレコとの恋が終わった直後に作られたという)を聴いて、
この人のグッド・メロディ・メイカーぶりに改めて感動したりも。


今日のBGM:「Alexandrie, Alexandra」by Claude François

↑2008年にサエキけんぞう氏がプロデュースした
クロード・フランソワ楽曲集『Clo Clo Made In Japan』に、
松尾清憲のヴォーカルで収録されていたこの曲のオリジナルを、
『最後のマイ・ウェイ』のエンディングでようやく聴くことができた。

曲はいいとして、ヴォーカルは松尾さんの方が何倍もカッコいい…。


posted by Good Time Graphicker at 05:37| 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年07月03日

Stoker

一昨日の映画の日に、
前々から観たかった『イノセント・ガーデン』を鑑賞。


Stoker.jpg


日テレ深夜の『映画天国』の冒頭の
赤ペン瀧川先生のコーナーで紹介されていて、
映像の雰囲気がスゴく自分好みだったから
鑑賞希望リストに入れていた作品だった。

パク・チャヌク監督のハリウッド・デビュー作。
『オールド・ボーイ』(2003年)を映画館に観に行って衝撃を受けて以来、
いつかこの監督はハリウッドで活躍するぞと思っていたけど、
結構時間がかかったなぁ。

アジア人の演出だとは思えないほど
古き佳きアメリカ臭が全編に漂っていて、
観てる最中てっきりアメリカの1950年代頃の話かと思ってた。
途中で携帯電話が出てきて「なんだ現代じゃん」と気付いたほど。

ヒッチコックが今も生きていたら
こんな作品を撮るんじゃないかって思って観てたけど
(現にストーリーも『疑惑の影』っぽい)、
前半に話の進展がタルかったのがちょっと残念。
これみよがし的な、含みを持たせた小エピソードばかりで
なかなか物語が大きくうねっていかないんだもん。
(ヒッチコック作品ならありえないぞ)

脚本を書いたのは、
なんと『プリズン・ブレイク』の主演俳優ウェントワース・ミラー。
原題の『Stoker』とはストーカー行為のことではなくて
(そっちの綴りは「Stalker」)、
本作の主役となる家族のファミリー・ネームで、
ミラーのインタヴューによれば、
『ドラキュラ』を生んだ作家ブラム・ストーカーからヒントを得たとか。

後半の怒濤の展開で判明するのが、
その家族の呪われた歴史であり、そういう意味では
ドラキュラ的ゴシック・ホラーの味付けも理解出来るし、
いつの時代かよく分からない演出も意図的だったのかと。

そしてやっぱり映像のセンスが素晴らしい。
小物の使い方も巧いし、セットも背景も配色も全てが美しかった。
ミア・ワシコウスカも役にピッタリだったし、
ニコール・キッドマンもまだまだ美しい!
(そう言えばニコール・キッドマンは以前にも『アザーズ』という
ヒッチコックの『レベッカ』風のゴシック・ホラーに出演していた。
血の気の薄そうなクール・ビューティはこういう作品に合うね)

猟奇的でヤバめなシーンも結構あるので
万人には薦められない作品だけど、
一風変わった映画を観たい人はぜひ。
(ってそろそろ公開終わっちゃうけど)


今日のBGM:「Summer Wine」by Nancy Sinatra & Lee Hazelwood

↑美しい未亡人イヴリン・ストーカーを演じるニコール・キッドマンと、
その死んだ夫の弟チャーリー・ストーカー演じるマシュー・グッドが
真夏の夜にダンスするシーンでかかったのがこの曲。
エロくて禁断で怪しい男女の踊りには
これ以上ないくらいピッタリの選曲だった。


posted by Good Time Graphicker at 05:05| 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月13日

Hitchcock

映画『ヒッチコック』を観た。


Hitchcock.jpg


今までありそうでなかった
アルフレッド・ヒッチコックそのものを描いた映画なのに、
今イチ盛り上がってない。
驚いたことに新宿や渋谷では上映してないので
仕方なく六本木まで観に行ったら、
ウィークデイの夜の回でガラガラだった。

そんなわけで「よっぽど面白くないんだろうなぁ」と
覚悟を決めて観たのが良かったのかも知れない。結構楽しめた。

“楽しめた”というのは
映画としての出来が良かったということではなくて、
ヒッチコック・ファンとして興味深いエピソードが多々あったという意味。
本作は『サイコ』制作の舞台裏を、
妻アルマ・レヴィルとの私生活を絡めて描いているのだが、
熟年夫婦の浮気云々の話は正直どうでもよくて、
面白かったのはもちろん『サイコ』制作の舞台裏の方だった。

あれだけ良質なヒット作をたくさん作ってきたヒッチコックでさえ、
『サイコ』制作の時点では資金繰りに苦労し、
インディーズ映画のようなかたちで制作されたとは知らなかった。
失敗すれば豪邸を手放さなきゃいけないという背水の陣で臨んだため、
プレッシャーに押し潰されそうになっている巨匠の姿に驚く。
(結局1400万ドルもの興行収入をあげて、
ヒッチコック最大のヒット作品になったのだが)

家に帰ってから『サイコ』を観直してみたけど、
あの映画が醸し出す神経が擦り切れるような冷たい空気感は
こういった制作環境のせいだったのかなと。
いや、それまでの湯水のようにお金を使った
ゴージャス三昧の映画制作に飽きて、
時代の変化を読み取りながら(お金が無いことも逆手にとって)
あえてヌーベルバーグ風の超リアルなホラー・ムーヴィーを作ったとしたら、
それこそ天才のなせるワザかも知れない。
(実際、映画の中でヒッチコックは「初期の映画制作のような、
自由でワクワクした感覚をもう一度取り戻したい」と妻に語るシーンがあった)

アンソニー・ホプキンス扮するヒッチコックは、
似てるか似てないかで言えば似てないんだけど、
物真似を一生懸命してる感じのイヤらしさが出てないのが流石。
ジャネット・リー役のスカーレット・ヨハンソンも
雰囲気を上手く掴んでた。
スカヨハは『バーバー』や『ブラック・ダリア』でも
40年代50年代の美女を妖艶に演じていて、
こういうバタ臭い昔風のアメリカ女をやらせると実に上手い。

笑えたのがアンソニー・パーキンス役の俳優があまりにも似てたこと。
当時すでにゲイの噂が広まっていた彼に
ヒッチコックがノーマン・ベイツ役をオファーするシーンで、
「あまりにも現実の僕と役柄がカブるから…」と怖じ気づく演技などは
本物のA・パーキンスみたいで怖いくらいだった。

他にもソール・バスやバーナード・ハーマンなども出てきて、
ヒッチコック・ファンとしては気が抜けなかった。
特に、シャワールームの殺人シーン
音楽はいらないと頑固に言い張るヒッチコックに対して、
バーナード・ハーマンが「こんな感じの音を作ってみた」と
例の弦楽器のみを使ったスコアを聴かせたら、
「これでいこう!」と即答する場面にグッときた。
才能と才能がぶつかって火花を上げる瞬間ってクールだよなぁ。

…っても映画としては凡作ですよ。
ハードなヒッチコキアンだけにお薦めします。


今日のBGM:「Speak Low」by Tony Perkins

↑「Moon-Light Swim」という全米24位のヒット曲もある
歌手“トニー・パーキンス”のアルバムから。
アービー・グリーンによるエキゾチックなオーケストレーションが
素晴らしい。トニーの歌も巧いっすね。


Anthony Perkins.jpg


posted by Good Time Graphicker at 04:40| 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。