2014年04月07日

Burt Bacharach: My Life and Music

『バート・バカラック自伝』を読了。

著名なコラムニストを父に持つ裕福な家庭に育ち、
容姿にも恵まれ、何よりも溢れる音楽的才能で
数々の名曲をものにしていったメロディメイカーの
さぞや華やかなる自伝…
と思いきや、陰の部分や波乱のエピソードも数多く語られていて、
あのエレガントなイメージが覆るような驚きだった。

3回の離婚に終わった恋愛遍歴や、
作詞パートナーとの長い確執、失敗作の後の隠遁生活、
そして病気の愛娘ニッキーとの断絶による苦悩など、
今まであまり語られなかったそんな陰の部分が特に面白かった、
と言えば、読み手としての品性が疑われるかもしれない。

だが、そんな試練を招いた原因でもある、
バカラック自身の孤独感や自己愛や傲慢さに触れた時、
「ああ、あの音楽は、だから生まれ得たのか」と納得したのも事実。
(そこら辺のことは、この松永さんの素晴らしい文章を読んで頂きたい)

そしてやっぱり読んでてドキドキしたのは、
音楽を作る上での煌めくエピソードの数々。
特に(1965年から70年くらいまでの)絶頂期の
サントラやミュージカルを制作する現場での逸話にすごく興奮させられた。

例えば、
『何かいいことないか仔猫チャン』の
「My Little Red Book」のレコーディングで、
ジャズ・ピアノ奏者のマンフレッド・マン(人物名)が
曲が難し過ぎて弾きこなせなくて仕方なくバート本人が弾いたとか、
『プロミセズ、プロミセズ』のタイトル曲のあまりの難しさに、
主演のジェリー・オーバックが「あの曲のおかげで
毎晩死にそうになる!」とバカラックに詰め寄ったとか、
その『プロミセズ、プロミセズ』開演後にバカラックが風邪で入院したために、
「I'll Never Fall In Love Again」の歌詞に流感の一節が入ったとか、
(そしてこの名曲はバカラック人生最速で書き上げられた!)
『明日に向かって撃て!』の自転車の名シーンは、
もともとジョージ・ロイ・ヒルがサイモン&ガーファンクルの
「The 59th Street Bridge Song(Feelin' Groovy)」に合わせて
撮っていたとか…。

結局、映画のそのシーンで使われたのは
B.J.トーマスの「Raindrops Keep Fallin' On My Head」だが、
なぜあの晴れたシーンに雨の曲なのか、
昔から不思議に思っていた。
その疑問にバカラックは明快に答えてくれている。

あの頃のバカラックは、
自分が書いた曲に響きがよく聞こえる言葉で
仮の歌詞を付けていたそうだ。
「雨にぬれても」を書きあげる間、終始脳裏をよぎっていたのは
「Raindrops Keep Fallin' On My Head」というフレーズだけだったと。

あまりにもメロディにぴったりと寄り添っていたので、
結局ハル・デイヴィッドも、監督のジョージ・ロイ・ヒルも
(映像との辻褄が合っていなくても)その歌詞を承認したらしい。
バカラックはメロディが頭に閃くと、
それに伴うアレンジも同時に聞こえてくると言うが
この時は歌詞までもが同時に聞こえてきたのだろう。

ちなみに彼は生涯に渡って不眠症に悩まされてきたが、
夜になっても頭の中の音楽が一向に消えないのが
その原因のひとつらしい。

いかにも天才音楽家らしいエピソードで、
(本人には悪いが)カッコいいと思ってしまった。


今日のBGM:「South American Getaway」by Burt Bacharach

↑バカラック曰く、
「あの映画(『明日に向かって撃て!』)のなかで、
一番誇らしく思っている曲だ」と。


Butch Cassidy And The Sundance Kid.jpg


posted by Good Time Graphicker at 05:20| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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