今回はフレンチ・ムーヴィー祭り!
『タイピスト!』
『アーティスト』はアメリカのサイレント時代のオマージュだったけど、
本作は50年代のアメリカ映画へのオマージュといった趣き。
監督のレジス・ロワンサルはかなりの古典映画マニアと見た
(しかも相当のアメリカかぶれ)。
タイピストが女性の花形職業だった古き良き時代の
総天然色な映像世界は個人的には大好物だけど、
あまりにもウェルメイドで屈託のないストーリー展開が
ちょっと退屈だった。
自分が19歳ならハマってたと思うけど…。
ヒロインのローズにタイプライターの早打ちをコーチする社長役の
ロマン・デュリス(こういう癖のある顔の男が主役なのがフランスっぽい)が
乗ってた小型車のデザインがすごく良かった。
あれは何という車なんだろう?
『最後のマイ・ウェイ』
フランク・シナトラで有名な「My Way」を作曲したことで有名な
フランスのポップ・スター、クロード・フランソワの伝記映画。
その「My Way」の原曲「Comme d'habitude」の歌詞が
凡庸な日常的世界観で驚いたけど、
(英語詞を付けたポール・アンカが素晴らしかったってことだ)
チビで顔も鼻もデカくて声も変なこの男がなぜ国民的歌手になって
10年以上も第一線を走っていけたのか、
映画を観終わっても全く理解できない。
(父親に認められたいと思いからくる膨大なエネルギーと、
独裁的なビジネス・センスだけであそこまで成功するもの?)
でも逆にその違和感が妙に引っかかって、
クロード・フランソワの音楽をちゃんと聴いてみようと思った。
劇中フランソワと恋に落ちるフランス・ギャルは
そこそこ似ていてキュートだったけど、
何回かニアミスするシナトラが全く似ていなかったのが残念。
ライヴ演奏シーンがあるオーティス・レディングは
めちゃめちゃ似てて最高だった。
日本にはなかなか伝わりにくい
フランスの“ザ・芸能界”が垣間見れて、
ポップス・ファンにはお薦めの音楽映画です。
『ノーコメント by ゲンズブール』
セルジュ・ゲンズブールのコメントのみで構成された
ドキュメンタリー映画。
ゲンズブールの40年に及ぶ活動歴を(本人の解説付きで)俯瞰できて
興味深かったけど、いかんせん時間軸に整合性がなかったり、
編集に抑揚がなかったりして、途中で何度も眠たくなってしまった。
それでも、女性に限らず同性をも引きつけるあの強烈な魅力の原因は
出自や容姿から来る根深いコンプレックスや
孤独や疎外感の裏返しだと判明したりして、
ゲンズブールという複雑な男を少し理解できたような気がした。
そしてもちろん、エンディングで流れた
女性コーラスが可愛いオールディーズ調の「La javanaise」
(ジュリエット・グレコとの恋が終わった直後に作られたという)を聴いて、
この人のグッド・メロディ・メイカーぶりに改めて感動したりも。
今日のBGM:「Alexandrie, Alexandra」by Claude François
↑2008年にサエキけんぞう氏がプロデュースした
クロード・フランソワ楽曲集『Clo Clo Made In Japan』に、
松尾清憲のヴォーカルで収録されていたこの曲のオリジナルを、
『最後のマイ・ウェイ』のエンディングでようやく聴くことができた。
曲はいいとして、ヴォーカルは松尾さんの方が何倍もカッコいい…。

