1週間以上が経った。
その間、彼女の音楽を聴くことができなかったが、
一昨日、臨海斎場で行われた「須藤薫さんをおくる会」に向かう道中、
iPodで『Tear-Drops Calendar』を聴いてみた。
真っ青に晴れ渡った空を見ていたら、
名曲「フロントガラス越しに」を聴きたくなったからだ。
聴いてるうちに10代〜20代の頃の想い出がイヤというほど甦ってくる。
『Tear-Drops Calendar』は1985年にリリースされた
CBSソニー時代のベスト盤だが、
タイトル通りそれまでの5枚のアルバムから
1月から12月までの各月ごとに1曲ずつ選んだ、
カレンダー仕様のコンセプト・アルバムとなっている。
高校時代、須藤薫というシンガーを知って初めて手にした1枚であり、
彼女の全てのアルバムの中で今でも一番好きだ。
どの曲も自分の青春時代のそれぞれの季節を華やかに彩ってくれた、
想い出深い曲たちばかり。
例えば「花いちめん夢いっぱい」という曲を聴けば、
長い浪人生活を経てようやく美大に受かった
ちょうど今頃のようなある晴れた春の日に
実家の自分の部屋の窓から遠い桜の花を見て、
まさに「花いちめん夢いっぱい」なキラキラした気持ちになったこととか。
(ちなみにこの曲は『Paradise Tour』収録のアルバム・ヴァージョンと、
この“Tear-Drops Calendar ヴァージョン”とはアレンジが違う。
ロックっぽい“Tear-Drops ヴァージョン”の方が断然好き)
別に大してドラマティックな想い出でもないが、
若き日のそういった日常のひとコマと、
薫さんの歌声がいちいち結びついている。
大人になってから杉さんとのジョイント・ライヴを何回も観たり、
前の事務所で紙ジャケ再発にデザイナーとして関わったりもしたが、
ご本人と話したことは一度もなかったはず。
自分は彼女の音楽のただの一ファンであり、
学生時代に本当に何度も何度も聴いたアルバムやシングル盤こそが、
僕にとっての須藤薫という存在そのものということになる。
だからこそ、彼女の曲を聴くことによって
それにまつわる想い出や思い入れが一気に噴出してしまうようで、
聴くのが少し怖かったのだ。
斎場には少し遅れて着いたので
関係者によるスピーチなどには間に合わなかったが、
お茶目な薫さんの写真を見ながら
自分なりのお別れをしてきたつもりだ。
その時の頭の中には、
『Tear-Drops Calendar』の最後の曲「涙のステップ」の
“恋もダンスのように いつの日か終わるけど
忘れてしまわないで 涙のステップ”
という一節がずっとリフレインしていた。
今日のBGM:「涙のステップ」by 須藤薫
↑薫さんで1曲と言ったら、やっぱりこの曲になるだろうか。
この曲は名盤『Amazing Toys』のA面4曲目に収録されているけど、
アルバムのラスト・ナンバーっぽく感じてしまうのは、
それだけ『Tear-Drops Calendar』の構成が完璧だからだと思う。
全ての演目が終わった後のアンコールみたいな曲なので、
斎場の別れの時に頭から離れなかったのかも知れない。