高度経済成長期に燦然と輝いていた団地文化を、
政治思想という今まで無かった切り口から考察している。
大阪の香里団地、東京の多摩平団地やひばりヶ丘団地、
千葉の常盤平団地や高根台団地などのマンモス団地のコミュニティが、
時代と共にどのような自治意識、政治意識で育まれていったかが
徹底した調査のもとに書かれている。
自分のことで言えば、
千葉稲毛海岸の公務員住宅(有名な稲毛3丁目団地のすぐ近くにあった)の
団地住まいを幼児期に体験したせいか、
未だに団地を見ると強烈なノスタルジックな思いに駆られる。
僕らは高度成長のど真ん中に生まれた世代だから、
感性の形成においても団地文化の影響は計り知れないはずだ。
(小中学校の時に東京のひばりヶ丘団地などから越してきた友人が
たくさんいたと記憶する)
自分がまだ小さかった当時、
全国に建てられた団地の中で何が考えられ何が起こっていたかが
伺い知れて、とても興味深く読んでいる。
偶然にも先週の『マツコの知らない世界』(TBS 深夜0:54〜)が
“団地の世界”というテーマだった。
こちらは建築デザインという観点から団地を愛でるゲストが登場、
往年の名団地をフェチ的に紹介していくという内容だったが、
マツコとゲストの対立が激化して本来のテーマがぼやけてしまった感。
もっと素直にマニアの団地愛を鑑賞したかった。
番組で紹介された大阪の住吉団地や西長堀団地、
川崎の河原町団地の構造物としての美しさはやっぱりスゴい。
常盤平団地などにまだ残っているスターハウスにしてもそうだが、
50年代〜60年代に建てられた機能美溢れる団地建築には、
単なるノスタルジックを超えた魅力があると思う。
ただ、番組内でマツコも言ってたけど、
自分は最新の住宅に住みながら、50年前の建築物を愛でるという行為に
少々後ろめたい気もすることは確か。
実際に今も古い団地に住んでいて不便な思いをされている方も
たくさんいるわけだし、
団地内での高齢化、孤独死などの社会問題も深刻なわけだし。
(何でもスタイリッシュな最新マンション風にするのではなく)
昔のデザインや機能美を尊重した上で建て替えをしつつ、
未来の時代に即した新しい団地コミュニティを実践していくなどして、
日本特有のこの団地文化をうまい具合に後世に継承して術はないものだろうか。
《追記》
このブログを書くために調べてみて知ったが、
自分が5歳まで住んでいた稲毛海岸5丁目の公務員住宅の団地は
数年前に取り壊されてしまったらしい。
大学時代にバイクで実家に帰ったついでに寄ってみた際にはまだ存在していて、
人も結構住んでいるようだった。
取り壊し直前にはゴーストタウンのように荒れ果てていたという。
最後にひと目見ておきたかった。
今日のBGM:「エイリアンズ」by キリンジ
↑冒頭のフレーズでいきなり“公団”というワードが出て来て、
最初聴いた時に本当に驚いた。
郊外の団地で聴きたいと思わせる、真の意味で日本のポップスだと思う。

