アップしました。
装幀と文字組みなどのブック・デザインの他に、
カラー・ページの構成、巻頭付録の南カリフォルニア地図とか
ファミリー・ツリーなども制作しました。
原書は1994年に刊行された『The Nearest Faraway Place』で、
著者のティモシー・ホワイトは『ビルボード』誌の編集長だった人。
翻訳は『ザ・ビーチ・ボーイズ・ダイアリー』でも
ご一緒させて頂いた宮治ひろみさん。
この分厚い本を数年前からお一人でこつこつと訳されていた。
P-Vine Booksの稲葉氏から正式にデザインの依頼があったのは
今年の初め頃だっただろうか。
夏ぐらいに出せたらいいっすねなんて話していたら、
2人とも別の仕事で忙しくなったりして
あれよあれよという間に夏が来て、秋も過ぎ…。
結局『SMiLE』のリリースにもギリギリ間に合わず、
先週の16日にようやく発売された。
するとなんとその日にビーチ・ボーイズ・リユニオンのニュースが
発表されてビックリ。ここまで延びたのが逆に最良のかたちとなった。
考えてみれば、
『ザ・ビーチ・ボーイズ・ダイアリー』を出したのが2005年、
ブライアン版『SMiLE』がリリースされたばかりだった。
今回はビーチ・ボーイズの『SMiLE』がリリースされた直後。
BB5と自分の仕事との巡り合わせには不思議な縁を感じる。
今回のカヴァー・デザインに関しては、
カリフォルニアの壮大な地理・歴史を物語っている内容から、
当初はヴァン・ダイク・パークスの『Orange Crate Art』みたいな
感じをイメージしていた。
が、結局は本書に登場する様々な要素をコラージュしたデザインに落ち着いた。
コラージュはただパーツをゴチャゴチャと合体させればいいわけではなく、
かなりのデザイン・センスを要する技法だと思う。
そういう意味ではとても難しく、
入稿の直前までミリ単位でチマチマ直していた。
派手さは無いかも知れないけど、
この本の内容のガジェット感を上手く表現できたと思う。
その内容については、このブログでもこことかこことかこことかここで
すでにしつこく書いているので、参考にしてみて下さい。
ひと言で言えば、ビーチ・ボーイズというグループと音楽が
どうやって生まれてきたか、ということを様々な文化と絡めながら
紐解いていった本…って感じになるかな。
音楽の本質を語るために、音楽とは関係ないこともたくさん出てくる。
そういう意味では、音楽にしか興味のない人には退屈な部分が多いかも。
逆に音楽の後ろにある文化全般に興味がある人はとても楽しめると思う。
カラー・ページには
(出張ブランディンのコンビでもある)平本肇氏&宮治淳一氏の
超レアなレコード・コレクションをたくさん掲載した。
また用語解説にはジミー益子氏(氏による特設サイトは必見!)、
解説は海野弘氏で、そちらも読み応えがあります。
(ちなみに海野さんは10年前に「カリフォルニア・オデッセイ」シリーズの
第5巻目『ビーチと肉体』で、初めて原書を詳しく紹介した方でもある)
個人的には、ひろみさんの「訳者あとがき」が印象的だった。
以前ロサンゼルスに在住し、今でも大好きだと言うひろみさんにしか書けない、
とても心揺さぶられる文章だった。
と、見どころ、読みどころの多い一冊ですので、
興味のある方はぜひ手に取ってみて下さい。
《お知らせ》
次回来年1月の音楽&トーク・イベント「Good Old Boys」は、
本書『ビーチ・ボーイズとカリフォルニア文化』を編集したP-Vine Booksの
稲葉将樹氏をお迎えして、ビーチ・ボーイズを中心とした西海岸の音楽について
語りたいと思います。
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音楽&トーク・イベント「Good Old Boys」
出演:水上徹/高瀬康一、ゲスト:稲葉将樹(P-Vine Books)
日時:2012年1月15日(日)Open:15:00 / Start:15:30
入場料:1,000円
場所:Live Cafe Again
東京都品川区小山3-27-3 ペットサウンズ・ビル 地下1F
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※「Good Old Boys」のツイッターを始めました。
http://twitter.com/badoldboys
今日のBGM:「The Nearest Faraway Place」by The Beach Boys
↑本書の原題は、アルバム『20/20』に収録されている
ブルース・ジョンストン作のインスト・ナンバーからとられている。
本書によれば、このタイトルはもともと『ライフ』誌に掲載された
シャナ・アレクサンダーの記事からブルースが拝借したとあるが、
ティモシー・ホワイトはなぜこの言葉を本書のタイトルに使ったかは
明確に記していない。でも本書を隅から隅まで読破すれば、
その理由は自ずと見えてくると思う。
この本を読んで、この地味な曲が大好きになった。

