何かを熱中して作っている時には妙なアドレナリンが出て、
辛いけど面白くもある。
ここ数日は巻末付録に載せる南カリフォルニアの地図を作っていた。
ビーチ・ボーイズにまつわる音楽地図とも言える内容で、
長い間、自分の頭の中にバラけて存在していた様々なピースが
空間的、地理的に配置されて、ものすごく為になった。
例えば、西海岸の60'sポップスを生み出した主要なスタジオは、
ほとんどがハリウッドの中心地に集中していたなんて、
今回地図を作ってみて初めて知ったことだ。
ウェスタン・スタジオとユナイテッド・スタジオは
サンセット・ブールヴァードで隣通しだったり、
(後に一緒になって"ユナイティッド・ウェスタン"となる)
A&Mスタジオ(現ヘンソン・スタジオ)はそこから少し西に行った
ラ・ブレア・アヴェニュー沿い、
キャピトルのスタジオはちょっと北上したヴァイン・ストリートに、
ゴールド・スターはそのヴァイン・ストリートを南下した
サンタ・モニカ・ブールヴァードとのコーナーにあって……
といった具合。
もしもタイムマシンがあったら、
1965年のここら辺に行ってウロウロしてみたい。
ブライアン・ウィルソンとかフィル・スペクターとか、
ハープ・アルバートとかバーズの連中とか絶対ウロついてそう。
スタジオからランチに出て来た誰かと遭遇できたりなんかして。
ランディ・ニューマンが書いた「Vine Street」という曲がある。
ヴァン・ダイク・パークスやニルソンやハーパース・ビザールといった
バーバンク関連(レニー・ワロンカー関連?)のミュージシャンが
必ずといっていいほどカヴァーする不思議なナンバーなのだが、
今回の地図制作でヴァイン・ストリート周辺が
いかに西海岸のミュージシャンにとって馴染みの深い場所なのかが分かると、
この曲の内容も理解できた気がした。
歌の主人公は、
以前ヴァイン・ストリートに住んでいたミュージシャン。
昔一緒に音楽をやっていたバンド仲間や
同じアパートに住んでいた女の子(彼女?)との想い出話が
ノスタルジックな旋律に乗って語られる。
バックビートが弾ける ヴァイン・ストリート
歌の翼と一緒に スウィングしながら
いかにもストリートに音楽が溢れていて楽し気な雰囲気だ。
ここは西海岸のティン・パン・アレイ?
10年前にL.A.に旅行した時、
ヴァイン・ストリートを(近くには行ったが)ちゃんと意識しては
歩かなかった気がする。
もしまたL.A.に行く機会があったら
「Vine Street」の色んなヴァージョンを聴きながら、
1つ1つのスタジオの跡地を丁寧に見て回りたいと思っている。
今日のBGM:「Vine Street」by Van Dyke Parks
↑この曲のカヴァーには、
どれもヴァース風の小曲が付いているのが興味深い。
ニルソンには摩訶不思議なロックン・ロールが、
ハーパース・ビザールには「Bye, Bye, Bye」というフォークっぽい曲が、
そして名盤『Song Cycle』の冒頭に入っている
このヴァン・ダイク・パークスのヴァージョンにも
スティーヴ・ヤングのカントリー・ナンバーが付いていた。
僕が思うに、これらの小曲は
歌の主人公が昔バンドと一緒に演った曲という意味なんじゃないかな?
「Vine Street」は「ここに昔作ったテープがある」という歌詞で始まるから、
それまでのヴァースはそのテープの内容を表現していると
勝手に解釈しているのだが…。

