2010年11月12日

Art For Arts Sake

一昨日は湘南の音楽仲間の方々と、
金羊社のミュージックジャケットギャラリーを見に行った。

1年前に行った時のことはこの日のブログで書いた。

この常設展は3ヶ月ごとに内容を変えているのだが、
今回は待ちに待ったヒプノシス展だったから、
入稿間近の忙しい中、時間を作って観に行ってきたのだ。

今回はプログレを中心にしたPart 1ということで
自分の好きなポップス系のジャケットがあまり展示されていなかったが、
それでもロック名盤に必ず選出される有名ジャケットが
キラ星のごとく並んでいて圧巻だった。

驚いたのは
その尋常じゃない仕事の量。
アーティストと打ち合わせをして、デザインを練ってスケッチを描いて、
ロケ地を決めて撮影して…そしてフィニッシュの印刷まで、
コンピュータが無い時代に
いったい1枚制作するのにどれだけの手間と時間がかかったのか。

ヒプノシスって一応
ストーム・ソーガソンとオーブリー・パウエルの2人が
中心人物ってことになっているけど、
まさかこの仕事量をたった2人でこなしていたわけではあるまい。

恐らく全盛期にはたくさんのスタッフがいたとは思うが、
それにしてはヒプノシスというブランドの"ブレ"が
全くといって無いのが凄い。
よほどストーム・ソーガソンのヴィジョンが
隅々まで行き届いていたのだろう。

あと思ったのは、
ロックが一大産業になっていった70年代という時代だからこそ
これほどのバジェットとプロジェクトを動かせたという事実。
これが60年代だったり80年代だったりしたら、
こうはいかなかったんじゃないか。

音楽関係のデザインに携わっている者として、
その時代の豊かさに
どうしても羨ましさを感じてしまう。

同行した方々と
ジャケットを観ながら色々な話をしたが、
その中で結構盛り上がったのが10ccの一連のアートワークだった。

10ccのジャケットはほとんどヒプノシスが手がけているが、
中でも皆さんの評判が良かったのが『How dare you!』。
(↓クリックすると大きな画像が見られます)


How dare you omote.jpg


まるでミステリー映画の一場面を切り取ったような、
4人のキャラクターが電話をかけている構図が秀逸。
コンセプトに必ずストーリーが潜んでいる(と思わせる)ところが
ヒプノシスのアートワークの最大の魅力だと思うんだけど、
その特徴が一番顕著に出ているのが本作だと思う。
映画オタクのゴドレイ&クレームのご両人(残念ながら本作を最後に脱退)が、
ジャケット・デザインの打ち合わせで
嬉々としてアイデアを語る様子が目に浮かぶようだ。

ところでこの『How dare you!』、
見開きの中ジャケも素晴らしいのはご存知?

パーティの一室で何十人もの客が全員電話をかけているという
ものすごくシュールな絵面なんだけど、
その中に10ccの4人のメンバーが隠れているのだ。
(↓探してみて下さい)


How dare you ura.jpg


この「ウォーリーをさがせ!」的な写真を見開きに使うという
アイデアのもとになったのは、
本作の数年前にリリースされた
ビートルズの『赤盤』『青盤』のインナーに使われた
ドナルド・マッカリンの写真だと睨んでいるのだが
どうなんだろう?


The Beatles.jpg


今日のBGM:「Art For Arts Sake」by 10cc

↑今日はアートのことを書いたからこの曲しかないよね。
『How dare you!』B1収録のスチュワート&グールドマンのナンバー。
「芸術こそ我が命」なんて邦題が付いてるけど、
歌詞の内容はそんなに高尚なものではなくて
「お前の体をくれ」やら「老後に100万になるように金や銀をくれ」など
欲望むき出しの身も蓋もないもの。

10ccってゴドレイ&クレームが革新的で
スチュワート&グールドマンが保守的ってイメージが蔓延してるけど、
スチュワート&グールドマンも相当ヤバい曲をたくさん作ってる。


posted by Good Time Graphicker at 06:09| アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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