2010年09月30日

Temples Of Sound

『レコーディング・スタジオの伝説』
ようやく読み終えた。

20世紀のヒット曲や名盤を生み出した、
アメリカの数々の伝説的なスタジオの栄枯盛衰をドキュメントした1冊。

長年ポピュラー音楽に親しんでいると、
まずはプロデューサー/アレンジャーに目が行き、
更にはレーベル→本拠地→エンジニアへと興味が広がってくる。
そして最終的には録音スタジオに執着するようになる。

それはスタジオという魔法の箱が、
いかにサウンドの特徴を決定付けるか、
いかに出来上がった曲の最終的な良し悪しを左右するかということに
気付いてしまったからなのだが、
そんなコアな音楽ファンにとって、
この本の魅惑的なエピソードの数々には
心が躍らないはずはない。

スタジオのことを書くということは、
すなわちヒット曲が生まれる瞬間を描くということにもなる。
本作を読んでいると、
まるで昔から聴き慣れたレコードの制作現場に
タイムスリップしているようだった。

自分の好きな音楽を多く生み出したスタジオと言えば、
ユナイテッド・ウエスタン・レコーダーズと
サンセット・サウンドになると思うが、
以前『ザ・ビーチ・ボーイズ・ダイアリー』を制作したせいで、
このL.A.の2つのスタジオについてはかなり予習ができていた。

モータウンやチェスについても、
映画『永遠のモータウン』『キャデラック・レコード』
何となくその変遷を知っていたので
驚くような事実はそんなには無かったように思う。

俄然面白かったのは
RCAスタジオB、シグマ・サウンド・スタジオ、
コロンビア・スタジオだった。

ナッシュヴィル産カントリーやフィラデルフィア・ソウルといった、
たまたま今の自分が特に興味を持っているサウンドが生まれた
スタジオだからなのだが。
(音の良いコロンビアのサウンドにも昔から興味を持っていた)

RCAスタジオBでは
ロイ・オービソンの「Running Scared」や「It's Over」といった
名曲の録音の様子が語られていたし、
シグマ・サウンド・スタジオでは、
カメオ=パークウェイから始まってギャンブル&ハフやトム・ベルの登場を経て、
スピナーズやスタイリスティックスの時代まで、
1つのスタジオを軸としたヒット曲の変遷が鮮やかに描かれていた。

その中で面白い発見がひとつ。
オージェイズの「For The Love Of Money」
フェイザーや独特なエコーかかったスペイシーなサウンドは、
トッド・ラングレンのナッズがシグマで繰り広げた実験的なセッションが
ヒントになったんだって!
(確かにナッズの「Open My Eyes」の後半の感じに似てる)

ナッズとオージェイズ。
一見全く音楽性が違うグループなれど、
使用スタジオや共通のエンジニア(ジョー・ターシア)で括ると
影響やら関係性やらが見えてくるから面白い。
(そういう意味でも
この2つのグループは同じフィラデルフィア・サウンドなのだ)

最後に残念な点。
ゴールド・スターやA&Mスタジオが選ばれてなかったこと。
(何か理由があるんだろうけど)ポップス・フリークとしては
やはりこの2つのスタジオの物語を読んでみたかったなぁ。


今日のBGM:「Orange」by Nelson Riddle

今やハリウッドの名所になっているキャピトル・タワーだけど、
1956年にオープンした時の初セッションは誰のアルバムだったのか?

本書によれば、当時の人気作曲家が書き下ろした「色」についての曲を、
シナトラが56人編成のオーケストラを指揮してレコーディングした
アルバム『Tone Poem Of Color』だったという。
しかしスタジオ内の音のバランスは悪く、恐ろしくデッドで、
解決までにさらに1年間と100万ドルの資金を要したらしい。

↓このアルバム、たまたま持っていたので聴いてみたけど
確かに音があまり良くなかった。
ネルソン・リドルによる編曲はゴージャスで素晴らしいのだが…。
(ソール・バスによるジャケットも最高!)


Tone Poems Of Color.jpg


posted by Good Time Graphicker at 05:48| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。