『映画史上の名作11』という特集上映をやっていて、
その中から『悪魔とミス・ジョーンズ』という映画を観てきた。
30作品以上上映される中からなぜこの作品なのかと言えば、
信頼できる方のブログ情報を見て「面白そう」と思ったことと、
日本では今の今まで未公開・未ソフト化らしいので
これは観ておかねば!と。
で、やはりというかさすがというか、
これが実に面白かった。
NYにある大手デパートの経営者である
メリック(チャールズ・コバーン)は、
従業員たちが組合を作ろうとしているのを察知し、
首謀者を探ろうとして靴売り場の店員になりすまし潜入。
同じ売り場の女性店員(ジーン・アーサー)は
メリックを下流労働者と信じて色々と世話を焼くが…。
自分の身分を隠して組織に潜入するパターンって
往年のスクリューボール・コメディの王道。
我が愛しのビリー・ワイルダーも
三十路女が12歳の少女のフリをして少佐に惚れられる
『少佐と少女』(奇しくも本作と同じ1941年に制作!)や、
女装して楽団に潜入する『お熱いのがお好き』などで
そのパターンを何度も繰り返し使っているけど、
脚本家的には「いつ身分がバレるかのハラハラドキドキ感」が
物語を小気味よく牽引していくから堅実なパターンなのだろう。
本作も冒頭15分くらいで、社長のメリックが
新入社員として売り場に初登場する辺りから
一気に胸ぐらを掴まれるような面白い展開になる。
(ちなみに往年のハリウッド作品に自覚的なサラブレット、
ドリュー・バリモアは『25年目のキス』で
そのスクリューボール・パターンを見事に蘇らせている)
その手堅い面白さに加えて、
“労働組合と経営者の対立”というリベラルな題材を扱っている感じが
フランク・キャプラっぽくもある。
当初、悪魔のように性格の悪いメリックが、
同僚たちの素直さや明るさに次第に影響されていって
人間らしさを取り戻していく展開も実にキャプラっぽい。
というわけで、
ワイルダーmeetsキャプラな本作が面白くないわけがない!
監督は『オペラは踊る』『恋愛手帖』のサム・ウッド。
脚本を担当したノーマン・クラスナーはこの年(1941年)
本作でアカデミー脚本賞にノミネートされるが、
あの『市民ケーン』に敗れている。
今日のBGM:「Have You Met Miss Jones?」by The Jack Marshall Sextette