2014年02月10日

The Best Divorce

『最高の離婚 Special 2014』を観た。
やっぱりこのドラマは面白い。

連ドラが終わって1年後くらいにやるスペシャル・ドラマって
大抵付け足し感が拭えないけど、
今回のドラマは連ドラのテンションをちゃんと維持してたし
(いや1.5倍くらい高かったかも)
ストーリーもしっかり次のステージに移っていて、
俳優陣もスタッフも作品をとても大事にしてる感じが伝わってきた。

連ドラ放映時は視聴率も話題もそんなに盛り上がってなくて、
毎回楽しみに観ていた自分は、世間の反応に物足りなかった。
でもその後の反響がすごくて続編への期待も多くなってきたとか。
やはり本当にいい作品を作れば、多くの人にちゃんと
伝わるものだなぁと(当たり前のことに)嬉しくなる。

何がそんなに面白いのかと言えば、
2組のアラサー夫婦のキャラクター造形に尽きる。
特に瑛太と尾野真千子が演じる濱崎夫婦の性格、言動、会話…
この2人に関する何もかもが強烈に面白い。
面白いって言っても単に笑えるってことだけじゃなくて、
今の時代の空気に合ったリアルな面白さがある。

例えば2人の夫婦喧嘩にしても、
瑛太の相手を攻める身勝手で屁理屈な言葉のセンスに笑っていると、
尾野真千子が急に半ベソをかきながら、
あまりにも真っ当で痛烈な反論を繰り出してくる。
そのシリアスさに、さっきの笑いも一瞬にして凍り付くのだ。

そんな2人のやりとりの節々に、
今を生きる30歳くらいの男女(や夫婦)が抱える切実な問題が
しっかりと絡み付いていたりするから、
観てる方は笑ったり泣いたり考え込んだりと、とにかく忙しい。

そう言えば、連ドラ放送時に話題となった
瑛太の「ジュディマリ便座カバー」発言にしても、
すごくリアルなセリフでちょっとショックだった。
(一応、観てなかった人のために説明すると、
瑛太の元カノの真木よう子が昔から大切にしていた
JUDY AND MARYの「クラシック」という曲に対して、
瑛太が“安っぽい花柄の便座カバーみたいな音楽だ”と言った事件。
そのせいで瑛太は真木に“死ねばいいのに”となじられる)

人の価値観には上も下もないはずなのに、
日常の会話の中で僕らはついこういう発言をしてしまいがちだ。
誰かにとっては便座カバーみたいな音楽でも
誰かにとってはそれが生きる力となっているという、
すごく当たり前で重要な真実を突きつけられたような気がして
ハッとしてしまった。

瑛太の、こういう自分の価値観に疑いのない感じとか、
逆に他人の(自分とは違う)価値観を想像・受容できない態度とかは、
昨今のコミュニケーションに関するあらゆる問題の
とても大きな誘因になっている気がする。
(価値観の違いをこういう身近なエピソードに置き換えた
脚本家・坂元裕二の感性は素晴らしいと思う)

ところで、
今回のスペシャル・ドラマはハッピーエンドではなかった。
『最高の離婚』というタイトルのドラマだから、
復縁したら話が続かなくなるという意味では、
離婚したままというのがドラマ的に正解だとしても、
ちょっと予想外で終わった後に呆気にとられてしまった。

でもこれはもしかしたら、
更なる続編への伏線ではないのか。
そうだとしたら嬉しい。

自分の中では、今でも目黒川の桜並木の辺りに行けば、
相変わらず瑛太と尾野真千子の濱崎夫婦が
ドタバタやってると思っていたいだけなのだが…。
(いいドラマとは、必ず登場人物たちが
実際に存在してるんじゃないかと思えるものなのです)


今日のBGM:「目を閉じておいでよ」by バービーボーイズ

↑濱崎夫婦が大晦日に嫁の実家に帰った途端、
親戚一同のカラオケ大会で歌わせられる曲。
男女デュオの掛け合いソングとしても、
その後の夫婦に巻き起こる波乱を予感させる歌詞にしてみても、
いやはや完璧な選曲だった。


目を閉じておいでよ.jpg


posted by Good Time Graphicker at 04:26| TV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする