2014年02月23日

The Way Of Her Life

久しぶりに本のレイアウト仕事をやってます。
ジャケット仕事などと比べて、
ページ物は作業量が多くてやっぱり大変。
でも内容が面白いので楽しんでやってます。
詳細は無事発刊したらということで。

そんな忙しい合い間を縫って読んでたのがこの本。


私の暮らしかた.jpg

『私の暮らしかた』 大貫妙子 著

かなり前のことだけど、
音楽ドキュメンタリー番組で大貫妙子氏が
葉山での暮らしをちょっとだけ紹介していた。
その暮らしぶりがすごくいい感じに見えたので、
もっと知りたいと思ってこの本を手にとってみた。

30代の時に何気なく買った葉山の一軒家で
両親と暮らす様子が丁寧に描かれている。
音楽の話はあまり出て来ない。
料理の話、パリに住む友達の話、
秋田での田植えの話、なついていた野良猫が失踪した話…。
そんな誰の身近にでも転がっていそうな話を
表現者らしい瑞々しい感性で綴っていく。

もともとは東京の出身で、
華やかな都会の生活を謳歌した若い頃や、
レコーディングや取材で世界中を飛び回っていた時代を経て、
徐々に自然と触れ合いながらの田舎の生活に
愛おしさを感じるようになったという
気持ちの変化が綴られているが、
6年前に鎌倉に引っ越した自分にもすごくよく分かる。

そういう穏やかな生活の中にでも、
大貫さんの歌のように凛とした
一本ビシッと筋の通った強さが感じられるのが
読んでいて気持ちがいい。
(バスの中で騒ぐ中学生を「静かにしなさい!」と
一喝するひとコマとか、思わず笑ってしまった)

そんな微笑ましいエピソードが続く中、
東北の震災や、両親が相次いで亡くなるといった辛い出来事が襲う。
ラジオなどでのクールな喋りからは想像もできない
感情の乱れが文章に表れている箇所もあった。
しかもそういう辛い時にでもツアーをこなしていて、
あの歌声を聴かせていたのだから
その精神力たるや…。

その後も札幌に構えた家と葉山を行き来しながら、
相変わらず自由で素敵に暮らしている。

自由に生きることはとても難しく、時に無性に寂しくなる。
だから皆、自由をすぐに手放してしまう。

でも大貫さんの自由な暮らし方は、
やっぱり羨ましいし、すごくかっこいいと思った。


今日のBGM:「Siena」by 大貫妙子


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2014年02月10日

The Best Divorce

『最高の離婚 Special 2014』を観た。
やっぱりこのドラマは面白い。

連ドラが終わって1年後くらいにやるスペシャル・ドラマって
大抵付け足し感が拭えないけど、
今回のドラマは連ドラのテンションをちゃんと維持してたし
(いや1.5倍くらい高かったかも)
ストーリーもしっかり次のステージに移っていて、
俳優陣もスタッフも作品をとても大事にしてる感じが伝わってきた。

連ドラ放映時は視聴率も話題もそんなに盛り上がってなくて、
毎回楽しみに観ていた自分は、世間の反応に物足りなかった。
でもその後の反響がすごくて続編への期待も多くなってきたとか。
やはり本当にいい作品を作れば、多くの人にちゃんと
伝わるものだなぁと(当たり前のことに)嬉しくなる。

何がそんなに面白いのかと言えば、
2組のアラサー夫婦のキャラクター造形に尽きる。
特に瑛太と尾野真千子が演じる濱崎夫婦の性格、言動、会話…
この2人に関する何もかもが強烈に面白い。
面白いって言っても単に笑えるってことだけじゃなくて、
今の時代の空気に合ったリアルな面白さがある。

例えば2人の夫婦喧嘩にしても、
瑛太の相手を攻める身勝手で屁理屈な言葉のセンスに笑っていると、
尾野真千子が急に半ベソをかきながら、
あまりにも真っ当で痛烈な反論を繰り出してくる。
そのシリアスさに、さっきの笑いも一瞬にして凍り付くのだ。

そんな2人のやりとりの節々に、
今を生きる30歳くらいの男女(や夫婦)が抱える切実な問題が
しっかりと絡み付いていたりするから、
観てる方は笑ったり泣いたり考え込んだりと、とにかく忙しい。

そう言えば、連ドラ放送時に話題となった
瑛太の「ジュディマリ便座カバー」発言にしても、
すごくリアルなセリフでちょっとショックだった。
(一応、観てなかった人のために説明すると、
瑛太の元カノの真木よう子が昔から大切にしていた
JUDY AND MARYの「クラシック」という曲に対して、
瑛太が“安っぽい花柄の便座カバーみたいな音楽だ”と言った事件。
そのせいで瑛太は真木に“死ねばいいのに”となじられる)

人の価値観には上も下もないはずなのに、
日常の会話の中で僕らはついこういう発言をしてしまいがちだ。
誰かにとっては便座カバーみたいな音楽でも
誰かにとってはそれが生きる力となっているという、
すごく当たり前で重要な真実を突きつけられたような気がして
ハッとしてしまった。

瑛太の、こういう自分の価値観に疑いのない感じとか、
逆に他人の(自分とは違う)価値観を想像・受容できない態度とかは、
昨今のコミュニケーションに関するあらゆる問題の
とても大きな誘因になっている気がする。
(価値観の違いをこういう身近なエピソードに置き換えた
脚本家・坂元裕二の感性は素晴らしいと思う)

ところで、
今回のスペシャル・ドラマはハッピーエンドではなかった。
『最高の離婚』というタイトルのドラマだから、
復縁したら話が続かなくなるという意味では、
離婚したままというのがドラマ的に正解だとしても、
ちょっと予想外で終わった後に呆気にとられてしまった。

でもこれはもしかしたら、
更なる続編への伏線ではないのか。
そうだとしたら嬉しい。

自分の中では、今でも目黒川の桜並木の辺りに行けば、
相変わらず瑛太と尾野真千子の濱崎夫婦が
ドタバタやってると思っていたいだけなのだが…。
(いいドラマとは、必ず登場人物たちが
実際に存在してるんじゃないかと思えるものなのです)


今日のBGM:「目を閉じておいでよ」by バービーボーイズ

↑濱崎夫婦が大晦日に嫁の実家に帰った途端、
親戚一同のカラオケ大会で歌わせられる曲。
男女デュオの掛け合いソングとしても、
その後の夫婦に巻き起こる波乱を予感させる歌詞にしてみても、
いやはや完璧な選曲だった。


目を閉じておいでよ.jpg


posted by Good Time Graphicker at 04:26| TV | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月05日

Band(1973-1976)

伊藤銀次氏のトーク・イベント『銀次の部屋』@Again。
今回のゲストは宮治さんということで、
武蔵小山駅前の立ち飲み屋で一杯やってから参戦。

トーク熟練者同士ゆえのバランス良い会話が見事。
押しては引き、引いては押すといった知的なやりとりで、
お客さんを全く飽きさせない3時間弱でした。

もちろん飽きさせないのは話す内容も濃ゆいからで、
前半は宮治さんのサザン桑田さんや健太さんとの想い出、
後半は銀次さんのごまのはえ〜シュガー・ベイブでの想い出と、
奇しくも青春時代トーク対決の体となった。
しかもそれがそのまま日本のポップス全体の青春期ともなっているから
いやはやスゴいったらありゃしない。

宮治さんが桑田さんのバンドに
サザンオールスターズと勝手に名付ける話は何度聞いても面白い。
(有名なニール・ヤング「Southern Man」と
ファニア・オールスターズの合体の話ね)
ライヴ当日に初めて自分のバンド名を知らされ文句も言わず
「こんにちは、サザンオールスターズでぇ〜す!」と
第一声でしら〜っとやる桑田さんのお気楽さも最高だなと。

鎌校の文化祭で桑田さんが初めて宮治さんの前で歌ったのが
ビートルズの「Money」だったという話や、
(とにかく大きな声だったらしい!)
「いとしのエリー」の全体のイメージとしてのアイデアは
アイヴィーズの「Maybe Tomorrow」だったんじゃないか
という宮治さんの推測を聞いて、
(マリーナ・ショウの「You Taught Me How To Speak In Love」は
単に旋律だけの近似であると)
やっぱり桑田さんの音楽にはビートルズの系譜が最初から
息づいていたんだなぁと改めて感動。
(リトル・フィートやクラプトンとかだけだったら、
中学生の自分がサザンをあんなにも好きになるわけがない)

それと同じような意味で、
銀次さんが初めて達郎さんの家に行った時の逸話も面白かった。
その時に達郎さんはビーチ・ボーイズのコーラスを採譜した
分厚い紙の束を見せてくれたらしい。
中学生の時からひとりでコツコツと音を取っていて、
「これが僕の原点」と言い切ったそうだ。

更に、大瀧さんが達郎さんの自主制作盤を聴いて驚き、
達郎さんを始めとするシュガー・ベイブのメンバーを福生に招いて
9.21のはっぴいえんどラスト・ライヴに向けて
コーラスを依頼した場面での達郎さんの返答にシビれた。

「僕たちはビーチ・ボーイズはもうやってなくて、
フィフス・アヴェニュー・バンドみたいなバンドを目指してやってるので、
そんなコーラス隊みたいなことはやりたくないんだっ」(キッパリ!)

ナメられないぞ、という上の世代への反骨精神というか、
長いものには巻かれないという自立精神というか、
とにかくカッコいいよなぁ!

その言葉をニコニコしながら聞いていた
大瀧さんの器の大きさもスゴかったと、
銀次さんは側で見ていて感動したという。

結局シュガー・ベイブは9.21でコーラスをやるわけだから、
大瀧さんがどうやって達郎さんを説得したのか分からないけど、
たぶん徐々に大瀧さんの器の大きさ
(と音楽的なバックボーン)に対して尊敬し、
協力することにしたんだろう。

上記の桑田さんや達郎さんの話を聞いて思うことはただひとつ、
「スゴい人は最初からスゴい!」
(「栴檀は双葉より芳し」ということわざもあるように)

こういう特別な才能の人たちの青春時代の話を聞くと、
中年にもなって未だ何ひとつ大きなことを成し遂げていない
ボンクラな自分が本当に情けなくなったりもするけど、
(比べるのもおこがましい!?)
まぁこんなスゴい人たちの音楽を
青春時代から浴びるように聴けただけでも、
(そしてこうやって当事者の話を近くで聞けるなんて)
いい時代に生まれて良かったなぁとつくづく思うわけです。

何はともあれ、銀次さん、宮治さん、
楽しい話をありがとうございました。


今日のBGM:「Down Town」by シュガー・ベイブ

↑銀次さんが作詞をしたこの曲についても多くが語られた。
もともとキングトーンズ用に曲作りを依頼され、
銀次さんがダンヒル時代のフォー・トップスの曲
(恐らく「I Just Can't Get You Out Of My Mind」あたり?)を
イメージしながらタイトルとサビだけを作って達郎さんに聴かせたら、
当時ハマっていたアイズレー・ブラザーズの
「If You Were There」っぽい感じで全体をまとめてくれたと。

そうか、この曲の華やかなソウル・フィーリングは、
アイズレーだけじゃなくてフォー・トップスのせいでもあったのか。


Down Town.jpg


ちなみに今日のブログの記事タイトル「Band(1973-1976)」は
シュガー・ベイブの想い出を歌った村松邦男氏の曲名から。
今回の対談で多く語られた時代って恐らく1973年〜1976年あたりだから。


posted by Good Time Graphicker at 05:34| 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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