有難うございました。
今回は水上さん念願の企画だった
ヴァン・ダイク・パークスを特集しました。
選曲と音源は全て水上さんによるもので、
かなりレアな曲もかかったので
来て頂いた方々には楽しめたのではないでしょうか。
ヴァン・ダイク・パークスの音楽って、
コンボ編成によるロックンロールで育った僕らより上の世代には
なかなか理解出来るものではなくて、
思い入れのある人はあまりいないような気がする。
また、逆に若い世代の間では
細野さんやブライアン・ウィルソン(『SMiLE』)との絡みから
半ば伝説的な扱われ方をされていて、
純粋にいちアーティストとして語られる機会は
意外と少ないようにも思う。
そういう意味でも、
ヴァン・ダイクの音楽を1から順に紐解いていくような
今回の催しは貴重かつ、自分もとても勉強になった。
個人的に特に興味深かったのは最初の部分。
ヴァン・ダイクはハリウッド映画の子役時代の経て、
大学でアカデミックな音楽を学んだ後、
西海岸でお兄さんと一緒にフォーク・グループで演奏し始めたのだが、
「西海岸」で「フォーク」という出発点が
その後の彼の音楽を形成する上で
大きなポイントとなっていることに気付いた。
1曲目にかけたグリーンウッズ(パークス兄弟が在籍した
グリーンウッド・カウンティ・シンガーズが発展したグループ)が
1964年にカップからリリースしたシングル「Southbound」が、
すでに「Number Nine」や「Come To The Sunshine」
(ヴァン・ダイクがMGMからリリースしたシングル曲)と
同じ匂いを発していたことに衝撃を受けたが、
ヴァン・ダイクがサンシャイン・ポップ時代にアレンジした
あのキラキラした特徴的なサウンドは、
フォーク時代に養ったストリングス(弦)ミュージックの
発展系だったのかと腑に落ちたのだ。
初期ヴァン・ダイクのアレンジは
フィル・スペクターと同じようなマッドな印象を受けるけど、
アコースティック・ギターのストロークを多用したスペクターに対して、
アルペジオ的な演奏法で音の隙間を埋めていくような
ヴァン・ダイクの(隙間恐怖症のような)アレンジは、
実は彼がフォーク・ミュージシャンだったことに起因するのかも、と。
後にそのギターのアルペジオが
カリブ音楽のスティールパンの音に変わっても、
カラフルな点描のようにキラキラしたサウンドの印象は
全く変わらないし。
一般的に聴きやすいと評価の高い『Clang Of The Yankee Reaper』が、
自分にとって今イチ魅力的に聴こえないのは、
ストリングス・ミュージックによるキラキラ感が
ほとんど感じられないせいなのかも、とも思った。
(その代わり太いリズムとカッコいいブラス・セクションは堪能できるが)
だからこそ、『Jump!』のオープニング・ナンバーや
「Opportunity For Two」のマンドリンの響きに心振るわせた。
ストリングスのキラキラ感を復活させた上に、
とびきりのポップ・ミュージックにもなっている『Jump!』が
やっぱり自分が一番好きなアルバムだなと再認識したり。
以上のことをイベントの最中に考えていたわけだけど、
ヴァン・ダイクの音楽に対してのそんな思考を代弁してくれるような、
水上さんが言い放った象徴的なひと言がある。
「行き過ぎたフォーク・ミュージック!」
うーん、今回のテーマはこの言葉に尽きるな。
とても分かりにくい孤高のアーティストの起源と変遷を
とても分かりやすくプレゼンしてくれた水上さん、
そして今年の初めにペット・サウンズ・レコードに
ヴァン・ダイクが来店した時の模様を
詳しくレポートしてくれた森陽馬くん、
お疲れ様でした&有難うございました。
今日のBGM:「Do What You Wanta」by Van Dyke Parks
↑当時日本でも国内盤がリリースされた1966年のシングル
「Number Nine」のB面曲。今回初めて聴いたけど、
ヴァン・ダイクの才気がほとばしった実にマッドなナンバーだった。
こういう曲を聴いて、ブライアン・ウィルソンとか
レニー・ワロンカーとかスティーヴン・スティルスが
参ってしまったワケね。