2013年11月29日

Van Dyke Parks Colors

一昨日の「Good Old Boys」に来てくださった皆さん、
有難うございました。

今回は水上さん念願の企画だった
ヴァン・ダイク・パークスを特集しました。
選曲と音源は全て水上さんによるもので、
かなりレアな曲もかかったので
来て頂いた方々には楽しめたのではないでしょうか。

ヴァン・ダイク・パークスの音楽って、
コンボ編成によるロックンロールで育った僕らより上の世代には
なかなか理解出来るものではなくて、
思い入れのある人はあまりいないような気がする。
また、逆に若い世代の間では
細野さんやブライアン・ウィルソン(『SMiLE』)との絡みから
半ば伝説的な扱われ方をされていて、
純粋にいちアーティストとして語られる機会は
意外と少ないようにも思う。

そういう意味でも、
ヴァン・ダイクの音楽を1から順に紐解いていくような
今回の催しは貴重かつ、自分もとても勉強になった。

個人的に特に興味深かったのは最初の部分。
ヴァン・ダイクはハリウッド映画の子役時代の経て、
大学でアカデミックな音楽を学んだ後、
西海岸でお兄さんと一緒にフォーク・グループで演奏し始めたのだが、
「西海岸」で「フォーク」という出発点が
その後の彼の音楽を形成する上で
大きなポイントとなっていることに気付いた。

1曲目にかけたグリーンウッズ(パークス兄弟が在籍した
グリーンウッド・カウンティ・シンガーズが発展したグループ)が
1964年にカップからリリースしたシングル「Southbound」が、
すでに「Number Nine」や「Come To The Sunshine」
(ヴァン・ダイクがMGMからリリースしたシングル曲)と
同じ匂いを発していたことに衝撃を受けたが、
ヴァン・ダイクがサンシャイン・ポップ時代にアレンジした
あのキラキラした特徴的なサウンドは、
フォーク時代に養ったストリングス(弦)ミュージックの
発展系だったのかと腑に落ちたのだ。

初期ヴァン・ダイクのアレンジは
フィル・スペクターと同じようなマッドな印象を受けるけど、
アコースティック・ギターのストロークを多用したスペクターに対して、
アルペジオ的な演奏法で音の隙間を埋めていくような
ヴァン・ダイクの(隙間恐怖症のような)アレンジは、
実は彼がフォーク・ミュージシャンだったことに起因するのかも、と。

後にそのギターのアルペジオが
カリブ音楽のスティールパンの音に変わっても、
カラフルな点描のようにキラキラしたサウンドの印象は
全く変わらないし。

一般的に聴きやすいと評価の高い『Clang Of The Yankee Reaper』が、
自分にとって今イチ魅力的に聴こえないのは、
ストリングス・ミュージックによるキラキラ感が
ほとんど感じられないせいなのかも、とも思った。
(その代わり太いリズムとカッコいいブラス・セクションは堪能できるが)

だからこそ、『Jump!』のオープニング・ナンバーや
「Opportunity For Two」のマンドリンの響きに心振るわせた。
ストリングスのキラキラ感を復活させた上に、
とびきりのポップ・ミュージックにもなっている『Jump!』が
やっぱり自分が一番好きなアルバムだなと再認識したり。

以上のことをイベントの最中に考えていたわけだけど、
ヴァン・ダイクの音楽に対してのそんな思考を代弁してくれるような、
水上さんが言い放った象徴的なひと言がある。

「行き過ぎたフォーク・ミュージック!」

うーん、今回のテーマはこの言葉に尽きるな。

とても分かりにくい孤高のアーティストの起源と変遷を
とても分かりやすくプレゼンしてくれた水上さん、
そして今年の初めにペット・サウンズ・レコードに
ヴァン・ダイクが来店した時の模様を
詳しくレポートしてくれた森陽馬くん、
お疲れ様でした&有難うございました。


今日のBGM:「Do What You Wanta」by Van Dyke Parks

↑当時日本でも国内盤がリリースされた1966年のシングル
「Number Nine」のB面曲。今回初めて聴いたけど、
ヴァン・ダイクの才気がほとばしった実にマッドなナンバーだった。
こういう曲を聴いて、ブライアン・ウィルソンとか
レニー・ワロンカーとかスティーヴン・スティルスが
参ってしまったワケね。


Do What You Wanta.jpg


posted by Good Time Graphicker at 20:40| 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月25日

Come To The Sunshine

水上さんと隔月で開催している音楽&トーク・イベント
「Good Old Boys」が明後日(27日)に迫ってきました。

今年最後の「Good Old Boys」は
ヴァン・ダイク・パークスを特集します。

44年間にオリジナル・アルバムをたった6作しか作ってこなかった
超寡作のヴァン・ダイクが、今年はなんと2作も新作を発表。
来日公演や、更にペット・サウンズ・レコード店に来店したりと、
大きな話題を振りまいた1年となったこともあり、
語るなら今年中にでしょ、ということになりました。

今回はゲスト無しで、
ヴァン・ダイク周辺のバーバンク・サウンドや
カリフォルニア・ポップスに精通している
水上さんに多くを語って貰おうと思います。
(今回僕は聞き役に徹しようかと)

ヴァン・ダイク・パークスって作品数が少ないし
もちろん自身のヒット曲なども無いわりには、
西海岸のロック&ポップスの重要な場面に度々居合わせたりして、
長年に渡って強烈な存在感を保ち続けています。
(近年の若いアーティストへの影響力も大きいはず)
そんな立ち位置も含めた、唯一無二のキャラクターが
面白いなぁと昔から思っていました。

特異な生い立ちから育まれた多彩な音楽性のバックグラウンドなどは
単純にひと言で語ることはできないとは思いますが、
彼のレコードを次から次へと聴きながら、
カリフォルニア音楽の光と影について
想いを巡らせたいと思っています。
時間があればぜひお越し下さい。

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音楽&トーク・イベント「Good Old Boys」
出演:水上徹/高瀬康一
日時:2013年11月27日(水)Open:19:00 / Start:19:30
入場料:1,000円
場所:Live Cafe Again
東京都品川区小山3-27-3 ペットサウンズ・ビル 地下1F
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今日のBGM:「The Water Is Wide」by Van Dyke Parks

イベントの予習も兼ねて、
最近の寝る時のBGMはもっぱらヴァン・ダイクの新作
『Super Chief:Music For The Silver Screen』を。
1950年代ハリウッドを追憶した眩く華麗なサウンドに
いつの間にか微睡みへと誘われて、いつも最後まで聴けない(泣)。

↑ところで、このアルバムの収録曲の中に
「The Water Is Wide」というタイトル・ナンバーがあるのだが、
有名なイギリス民謡のカヴァーかと思いきや
聞き覚えのあるあの旋律が全く出て来ない。
その代わり別の「Flats As A Platte」という曲の最後の方に
「The Water Is Wide」の旋律がちょっとだけ顔を出す。
ここら辺もヴァン・ダイク特有の遊び心なのだろうか。

本作、本人による解説も面白くて、
子役時代に(ヴァン・ダイク11歳!)リリアン・ギッシュに
生意気な質問をした逸話なども語られている。


Super Chief.jpg


posted by Good Time Graphicker at 18:19| 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月23日

Paul McCartney's Out There Japan Tour

ポール・マッカートニー「Out There Japan Tour」
@東京ドーム最終日。

新譜から結構やるって情報を聞いて
前日に慌てて『NEW』を買って一夜漬けで予習。
結局この日のブログで取り上げた「Junior's Farm」が
新曲「Save Us」に変わっちゃって残念だったけど、
この曲が最高にカッコよかったので全然OKだったし、
「New」「Queenie Eyes」「Everybody Out There」など
新譜からいいなと思ってた曲ばかり演ってくれて大満足。
50年間という長いスパンでの新旧入り乱れての選曲なのに、
流れで聴くと全然違和感が無いことにまず衝撃を受けた。

選曲で他にグッときたのは、
これまでの来日公演で(たぶん)演らなかった曲の中で
特に個人的に好きな「Listen To What The Man Said」
「Another Day」「Hi Hi Hi」あたりかな。
「何でこの曲?」と思ってた「Being For The Benefit Of Mr. Kite!」も
サイケなサーカスみたいな演出がライヴ映えするってことで納得。
(前の来日公演の「Fool On The Hill」的な立ち位置?)
あとジョージの「Something」は、
10年くらい前の公演ではウクレレだけで最後までやってたけど
途中からバンド・サウンドになるアレンジにして大正解だと思う。
サウンドが一気に増幅する瞬間に鳥肌がゾゾゾーッ。
(この曲を演ってる時のスクリーンにはジョージの写真が写ってたけど、
「Here Today」の時にジョンが登場しなかったのはなぜだろう?)

散々みんなが色々なとこで言ってることだけど、
どう考えても70歳を超えた老人のパフォーマンスじゃない。
(自分の母親とほぼ同じ歳だと気付いて愕然とした)
「ステージ上で一回も水を飲まない」なんて噂も流れてきて
「んなアホな」と思って観てたら本当に一滴も飲まなかった。
観てるこっちは興奮し過ぎて喉がカラカラだったのに!

2時間以上歌い続けて、アンコールに
あえて「Hi Hi Hi」と「Helter Skelter」を持ってきたポール。
自分の喉や声量に対するその自信に心打たれた。
(この次に「Oh! Darling」とかでも十分いけるんじゃないか?)
あと最後のアンコールで「Yesterday」の次に「Helter Skelter」って、
超有名極甘バラード→最強の元祖ヘヴィメタルという
ポール史上究極の2曲をぶつけた感じで、
そこにも作曲家としてのヴァリエーションの
自信みたいなものを感じたりして。

ところで、最終日ということで特別に
観客ひとりひとりにサイリウムが配られた。
「Yesterday」の時に皆で振って
ポールを驚かそうって企てだったんだけど、
「Yesterday」って左右に振るリズムの曲じゃないから
やっててすごく気持ちが悪かった。
ポールもそんなに驚いてなかったように見えたし(笑)。

でも5万人が振る赤いペンライトは壮観で、
こういう体験はさすがにドームでしか出来ない。
人生のポール3度目のライヴ体験は
この景色と共に一生忘れないだろうな。


今日のBGM:「Band On The Run」by Paul McCartney & Wings

今回のツアーではビートルズの曲が増えた分、
ウイングスの曲が減ったのが少し残念。
「Silly Love Songs」とかも聴いてみたかったなー。

↑後半に演ってくれたこの「Band On The Run」は
色んなサウンドや激しい展開がライヴ向きですごく楽しかった。
あのプログレちっくな前半部分から
霧が晴れたようなアコギ・パートに移行する瞬間の気持ち良さは
ライヴでもたまらんかった!


Band On The Run.jpg


posted by Good Time Graphicker at 05:07| 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする