2013年06月29日

I'm Not In Love

2ヶ月以上打ち込んでいた仕事がようやく一段落。
(その仕事については追々書きます)
ぼちぼちブログを再開しようかと。

書きたいことは色々とあるのだが、
とりあえずは先日観たBSの音楽番組
『SONG TO SOUL〜永遠の一曲〜』のことを。

この回は10ccの「I'm Not In Love」の再放送だった。
オリジナル放送は見逃してたから、
再放送を楽しみに待ってた回のうちのひとつ。

英国が生んだ屈指の名バラードであるこの曲、
実は当初のヴァージョンではリズミカルなラテン調のナンバーだったとか。
それをなかなかうまくまとめられず、しばらくほっぽり投げていたところ、
ある日、ロル・クレームがポツリと言った
「僕らの声だけでかたちにできないかな」というアイデアに端を発して、
今のような繊細なアレンジになったという。

あのロンドンの霧のような「アーーーー」という多重コーラスは
テープ・ループによるものだったと初めて知った。
繋ぎ目が目立たないように延々長くループしたテープを、
スタジオの四隅に立ったメンバーがピンと張りながら持って再生させ、
曲の展開によってエンジニアがフェーダーで上げ下げしながら
オーバーダブしたという、鬼のような苦労話が披露された。
今ではDTMで簡単と思える作業も、
1974年当時はこんなにアナログな方法だったんですねぇ。

鈴木慶一氏がインタヴューで、
「当時、あのサウンドをどうやって作ったのか全く想像が出来なかった。
ギズモっていう新兵器の仕業なのか!?…とかね(笑)」と。

日本のミュージシャンが理解できないのも無理はない。
この曲をシングルとして発表した瞬間に、
ポール・マッカートニーやらエルトン・ジョンやらロイ・ウッドやら
名うてのミュージシャンたちが一斉に電話をかけてきて、
「素晴らしい!どうやって作ったんだ?」と聞いてきたというのだから。

番組にはストロベリー・スタジオのエンジニア、
ピーター・タターソールなんかも出演して嬉しかったが、
やっぱりロル・クレームとケヴィン・ゴドレイが出てこなかったのが寂しい。
まあ仕方ないか。この曲はスチュワート&グールドマン作だし。

昔、10ccが決裂した原因は、
この「I'm Not In Love」の大ヒットによるものだと
物の本で読んだことがある。
スチュワート&グールドマン作のこの曲のヒットで、
ゴドレイ&クレームが嫉妬したというのだ。
そんな単純なものでもないと思いたいが、
次作『How Dare You!』を最後にゴドレイ&クレームは脱退してしまう。

この日のブログで僕は、
スチュワート&グールドマン派を自認しているが、
それは通な音楽ファンにあまりにもゴドレイ&クレーム派が多くてウンザリして、
あえてスチュワート&グールドマン派を宣言したのであって、
本当はゴドレイ&クレームも大好きなのだ。
(ジョンが死ぬほど好きなのに、あえてポール派でいる、みたいな)

というか、オリジナル・メンバー4人の10ccが大好きなのだ。
(『Sheet Music』最高!)

なのでこの番組で、ゴドレイ&クレームの2人が
あまり関与していないと思っていた「I'm Not In Love」に、
ロル・クレームのアイデアが根本的な役割を担っていたという事実を知って、
とても嬉しかった。

この番組を観た直後、
大好きなベスト盤『Greatest Hits 1972-1978』を
久々に大音量で聴いてしまった。
(高校生の時に初めて買った10ccのアルバム。
↓アートワークはベスト盤でも手抜きのないヒプノシス!)


Greatest Hits 1972-1978.jpg


今日のBGM:「I'm Not In Love」by 10cc

↑この曲を初めて聴いたのは高校生の頃、
出光のTV-CMで流れてきて「なんていい曲なんだろう」と感動。
速攻で駅前のレコード屋でシングル盤を買った↓


I'm Not In Love.jpg


でも悲しいかな、シングルは3分46秒のショート・ヴァージョンだった。
この曲の本当の威力を知ったのは、
その数年後にアルバム『The Original Soundtrack』を買って、
6分を越すオリジナル・ヴァージョンを聴いてからだったのだが。

ところで全然関係無いけど、
いつぞやの「空耳アワー」で「The Things We Do For Love」
出だしを「爪にポーク、ハツ、ホルモンにレバー」
空耳したヤツ、ちょっと尊敬した。





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2013年06月08日

That's Liberty Sound!!

久々に参加した出張ブランディン@アゲイン。

今回のテーマは“リバティ・レーベル特集”ということで、
「絶対に行かなきゃならん!」と
差し迫った仕事を中断して武蔵小山へ。

「これがかかればいいな」と思ってた曲はほぼかけてくれた。
出ブラ史上最高の選曲だったんじゃないかと思えるほど、
個人的に好きな曲ばかりだった。
さすがは平本さん&宮治さん!

《嬉しかった曲》
・ジュリー・ロンドン「We Proved Them Wrong」
・アルダー・レイ「Cause I Love Him」
・ヴィック・デイナ(ダナじゃないらしい)「A Lifetime Lovin' You」
・ペイシェンス&プルーデンス「Gonna Get Along Without You Now」

↑ここら辺は本ブログで今まで散々騒いできた曲ばかり。
特に宮治さんがかけたジュリー・ロンドンの
「We Proved Them Wrong」は、ここ数年で一番衝撃的な曲だったから
オリジナル・シングルで聴けたのがたまらなく嬉しかった。
シー&ヒムがカヴァーした「Gonna Get Along Without You Now」の
ペイシェンス&プルーデンス版もホント最高!

《ビックリした曲》
・スコット・エンゲル「Anything Will Do」
・ディック・ローリー「I Got Over You」
・ウェンディ・ヒル「(Gary, Please Don't Sell)My Diamond Ring」
・エディ・コクラン「Summertime Blues」

↑スコット・ウォーカーやディック・グラッサーの
駆け出しの頃の若き歌声にビックリ。
「This Diamond Ring」のアンサー・ソングの存在に更にビックリ。
でも一番ビックリしたのは、エディ・コクランの
「Summertime Blues」のオリジナル・シングル・ヴァージョンの
エンディングがフェイド・アウトじゃなかったことだ!

《知らなかったけどすごく良かった曲》
・ヴィック・イー・リー「A You're Adorable」
・ザ・ヴィクトリアンズ「Happy Birthday Blue」
・ヴァーン・マッキンタイア「Seven Million People」

↑ヴィック・イー・リーはヴィクトリアンズのヴォーカルの女性で、
「A You're Adorable」はモロにスペクターのボブ・B・ソックス
タイプの曲で笑ってしまった。
ヴィクトリアンズの「Happy Birthday Blue」は
デヴィッド・ゲイツの超キュートなアレンジで、
いつかはシングルをゲットしたいと思わせる胸キュン・ソング。
ヴィクトリアンズは何曲か持ってたけど、この曲は知らなかったなぁ。
ヴァーン・マッキンタイアなる人物の曲も
「これぞリバティ・サウンド!」って感じでたまらんかった。

他にもクリケッツとかトレイシー・デイとかP.J.プロビーとか
デル・シャノンとかフリートウッズとかの好きな曲がかかりまくって、
夢見心地な2時間半だった。

そう、リバティ・サウンドの特徴をひと言で言うなら、
どこか現実離れしたドリーミーで底抜けにハッピーな音。
スナッフ・ギャレットらプロデューサーたちの資質による
ところも多いかもしれないが、
それはアメリカ西海岸のレーベルの共通したイメージだと思う。
やっぱり気候が温暖だったりハリウッドが近かったりするなどの、
地域的な要因が色々とあるはずだ。

そう言えば、このイベントの数日前、
(今やっている仕事で)ワーナー社内で色校確認をしていたら、
コーヒー片手に宮治さんがやって来て、
「いやぁ最近リバティばっかり聴いててさ、
やっぱり俺、西海岸のレーベルが好きだわ!」と楽しそうにひと言。

言われてみれば確かに自分も、
クールでカチッとした東海岸のレーベルの音よりは、
ラフでどこか夢心地な西海岸のレーベルの音の方が断然好きかも。

それは若い頃から(父親の影響で)慣れ親しんだ
ナット・キング・コールやフォー・フレッシュメンの
レコードのせいかも知れないし、
今、鎌倉に住んでたりすることとも関係があるのかも知れないなと
ちょっと思ったりした。


今日のBGM:「Here Today」by Bobby Vee

↑リバティの代表選手、ボビー・ヴィーのナンバーは
「Keep On Trying」と、このビーチ・ボーイズ・カヴァーが選曲された。
ヒップなカヴァーで時代の荒波を乗り越えようと
果敢に挑戦した(Keep On Trying!)心意気は買いたいぞ。
(アレンジはレオン・ラッセル。まぁ本家に敵うわけないよね)


Here Today.jpg


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2013年06月01日

Another Side Of Effects

一昨日の「Good Old Boys」に来て頂いた皆さん、
有難うございました。

しまMOON氏をゲストに迎えての「松尾清憲特集」、
おかげさまで盛り上がったイベントになりました。

松尾さんの音楽だけをかけても
「最高だよな!」と思えるものになると自負していましたが、
しまMOON氏の想像を超えたマニアックな物量作戦で
2倍も3倍も素敵な内容になったと思います。
やっぱり「好き度が恐ろしく深い人」と「何でも保存しとく人」には
絶対適わないなぁと痛感しました。

そのマニアックな物量とは、
ジャケ違いのレコードや貴重な映像集、
当時の雑誌の切り抜き、ファン・クラブ会報、
手書きのラジオのオンエア・リストなどなど。

中でも秘蔵映像の充実したコレクションにはびっくりで、
『SIDEEFFECTS』リリース時のMVはもちろん、
日本青年館でのライヴ映像(「僕等のハックルベリーフィン」)や、
フジテレビ『夕食ばんざい』出演時の映像
(あの松尾さんが「オリンピックやきそば」なる料理を作る衝撃映像!)
なんて激レアなものまで紹介して、
会場を大いに沸かしてくれました。

レア音源も惜しげも無く披露。
例えば「愛しのロージー」のデモ・ヴァージョン、
松尾さんが歌う(大滝さんの)「Blue Valentine's Day」、
ラジオ『ポップス泥棒』でのみ披露されたクリスマス・ジングル
「君だけにメリーメリークリスマス」などなど。
自分も初めて聴く音源ばかりで驚くやら嬉しいやら大変でした。

更には会場に来てくれた松尾さんのスタッフから、
このイベントにとご本人から直々に渡されたという
最新未発表デモ音源のCD-Rを頂き、
お客さんみんなであり難く拝聴するというサプライズもありました。
しかもめちゃめちゃいい曲!(松尾さん、有難うございました)

シネマ時代の「グッバイ・ハートブレイク」「電話・電話・電話」、
ポリドール時代の「サンセット・ドリーマー」、
「ヤンガーガール」「OH! キャロライン」
などの名曲群を聴きながら思ったんだけど、
最高のメロディに凝りまくりのアレンジ、
ちょっと屈折してるけどドリーミーでロマンティックな歌詞、
個性的な歌唱に巧すぎる演奏と、
全ての要素が限界まで振り切ってる松尾さんの音楽って、
(例えばロイ・ウッドとかの)自分が一番好きなタイプの洋楽に
限りなく近い存在だなと。

その「全部乗せ感」「Too Much 感」を体感した時に覚える
身悶えするような興奮…。

もし「Good Old Boys」にコンセプトみたいなものがあるとすれば、
「いい音楽を聴いた時の、こういう興奮を皆と味わいたい」という
その一点に尽きるような気がする。

そういう意味で今回のイベントは、
「GOB」を象徴するような内容になったかな
なんてちょっと思ったりしてます。

しまMOONさん、
改めてお疲れ様でした&有難うございました。


今日のBGM:「Hello, Hello, Hello」by New England

↑80年代に松尾さんがやってたラジオ番組『ポップス泥棒』で
かかった曲として、しまMOON氏が紹介したナンバー。
アメリカのハード・プログレ・バンドだけど、
KISSのポール・スタンレーがプロデュースしたこの曲は
松尾エッセンスが凝縮されたようなマジカル・ポップスでビックリ。

1979年だけにニューウェイヴでちょっとプログレ入ってるあたり、
シネマの音楽性にかなり影響を与えてそう。
タイトルも「電話・電話・電話」っぽいし!


New England.jpg


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