2013年03月29日

Try My World

一昨日のイベント『Good Old Boys』に来て頂いた皆さん、
有難うございました。

今回は年一回のゲスト無しの回。
テーマも決めず、水上さんと1対1でまったりとやらせて頂きました。

外は曇り空で肌寒いくらいだったけど、
もうすぐ4月ということで2人とも春らしい爽やかな選曲になった。

まず水上さんがかけた冒頭の2曲がいきなりツボ。
アストラット・ジルベルトの「The Thought Of Loving」は
まさに春らしいガーリーなボッサ・ナンバーで、
後で調べたら曲を書いたのがなんと「At The Hop」のヒットでお馴染みの
ダニー&ザ・ジュニアーズのデヴィット・ホワイトだった。
レン・バリーの「1-2-3」とかいい曲たくさん書いてて
最近とても気になる人だ。
ちなみにこの「The Thought Of Loving」、
スパイラル・ステアケースのヴァージョンも発見。

もう1曲、
ジョージィ・フェイムの1967年のシングル「Try My World」
デビュー当時の面影はどこへやらのフラワーでカラフルなポップ・ソング。
冒頭からハープのめくるめくアレンジがたまらないけど、
この人のスモーキーな声はこういう曲にもピッタリだと思う。

他にもシルヴィ・バルタンの日本語シングルとか、
インドネシア産ソフトロックの
ホワイト・シューズ&ザ・カップルズ・カンパニーとか、
幅広い選曲で楽しませてくれた。

水上さんの今回のテーマは
コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック。
こういうテーマを選ぶ姿勢に相変わらず「攻めてるなぁ」と感動するけど
紹介した3曲は今の季節にぴったりの爽やかナンバーばかり。
中でもアニタ・カー・シンガースの1979年のアルバム
『Thank You Load』に入ってる「God Is All」という曲が良かった。

このアルバムは宗教レーベル名門のWordからリリースされたらしいが、
この人、やってることは60年代と全く変わってない。
素晴らしいメロディとアレンジ、そして高度なコーラス・ワーク。
やっぱりアニタ・カーはどの時代も押さえとかなきゃならんなぁと痛感した。

今回の自分のテーマは“オールディーズ讃歌”で、
60年代に活躍したポップ・シンガーが70年代以降になって
当時のことを懐かしんでいるような曲を3曲選んでみた。
B.J.トーマスの「Rock And Roll Lullaby」とか
バリー・マンの「The Princess And The Punk」とか
ディオンの「Written On The Subway Wall」とか。

特にバリー・マンの1976年のシングル
「The Princess And The Punk」はこのイベントで紹介したいと
前から思っていた曲で、ようやくかけることができた。
クリスタルズの「Then He Kissed Me」などが織り込まれた
感動的なオールディーズ・アンセム。
この曲については思い入れが激しいので、
また別の機会にでも熱く語ろうと思う。

次回の「Good Old Boys」は5月30日(木)に予定しています。
また詳細が決まり次第お知らせします。


今日のBGM:「想い出色の雨」by 坂口良子

↑自分が前半に紹介した1曲。
女優の坂口良子が1979年にリリースしたアルバム『果実酒』から、
オフコースの小田&鈴木がコーラスに参加した曲を。
この2人が他人のアルバムに参加するのは貴重ってことと、
たまたまお客さんにオフコース・ファンの方がいたので…。
オフオースの曲で言えば「恋人よ そのままで」に雰囲気が似てるかな。

ちなみにこのアルバム、
作曲(の大半)とプロデュースは加藤和彦、アレンジは坂本龍一、
演奏にはYMOの3人や鈴木茂が参加してるという超豪華プロジェクトです。
(『ラグジュアリー歌謡』にも載ってたね)

《追記》
昨晩このブログをアップして一夜明けたら、
なんと坂口良子さんの突然の訃報が入ってきてとても驚いています。
一昨日亡くなられたそうですが、そのちょうど同じ日に
イベントで坂口良子さんの曲を(実は2曲も)かけたのです。
偶然とは言え、不思議なシンクロニシティを感じてしまいます。
小学生の時、テレビにかじりついて観てた
『池中玄太80キロ』のアッコ役が大好きでした。
ご冥福をお祈りします。


坂口良子.jpg




posted by Good Time Graphicker at 05:42| 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月26日

The Wrecking Crew

遅まきながら
『レッキング・クルーのいい仕事』を読み終えた。

60年代から70年代にかけて活躍した
西海岸のトップ・スタジオ・ミュージシャンたちの物語。
まさに「物語」で、著者が当事者たちに行った膨大なインタヴューを
話し言葉としてそのまま載せるんじゃなく、
ひとりひとりのミュージシャンの物語として構成されていて
楽しく読めた。

無名のいち音楽ファン、またはプレイヤーが
アメリカの片田舎から成功を夢見てロサンゼルスにやってくる。
様々な紆余曲折や出会いを経て、コネでしか入れない
LAのスタジオ・ミュージシャンの仲間入りを果たし、
(今では誰もが知る)ヒット曲のレコーディングに参加するという
大きなクライマックスに到達するそれぞれの物語は、
読んでいてとてもスリリングだった。

フィル・スペクターやビーチ・ボーイズといった
今や伝説となっているレコーディングに関しての物語は、
今までに様々な本やCDの解説などで聞きかじっていたために
そんなに新鮮ではなかったが、
例えばジミー・ウェッブやメイソン・ウィリアムズなどの
レコーディング時のエピソードなどは、
自分があまり知らなかったこともあってとても興味深く読めた。

まだ19歳の若造だったジミー・ウェッブが、
ジョニー・リヴァースの『Changes』というアルバム制作のため、
自身が書いた「By The Time Get To Phoenix」
レッキング・クルーのメンバーたちと初セッションする
緊張感溢れるエピソードが面白かった。

ウェッブが超一流のキーボーディストであるラリー・ネクテルに
ピアノの席を譲ってもらおうと声をかけると、
他のプレイヤーたちに「こいつ何様?」という
冷たい視線を一斉に投げかけられという。
でもそれは作曲者本人に演奏に参加してもらいたいという
ジョニー・リヴァースたっての希望であり、
実際演奏が終わると「この若造は本物だ」と
プレイヤーたちに一瞬にして認められたのだとか。
そしてそのレコーディングにはなんと
スティーヴ・マックィーンが見学に来ていたという。

またメイソン・ウィリアムズの
「Classical Gas」のレコーディングでは、
ワーグナーの作品からヒントを得た複雑怪奇なアレンジに、
いつもの3コードのロックンロールの演奏に飽き飽きしていた
レッキング・クルーのメンバーたちが奮い立って
現場が大いに盛り上がったという。

一介のフォーク・ミュージシャンだったウィリアムズが
女の子の気を惹きたいという動機だけで書いたこの曲が、
マイク・ポストのアレンジとレッキング・クルーの演奏で生まれ変わり、
チャート2位に輝きグラミー賞まで穫ってしまうんだから
ポップスはアレンジと演奏が肝だとつくづく思う。
(米ラジオ史上、最も多くオンエアされたインスト曲でもあるそうだ)

こういった物語は音楽を聴く上で大して重要ではないかも知れない。
でも知っていればその曲が何倍も味わい深く鑑賞できる。
実際に僕はこれらのエピソードを読んでから、
ジョニー・リヴァースの「By The Time Get To Phoenix」も
メイソン・ウィリアムズの「Classical Gas」も
何回も聴き直してしまった。
そしてこの2曲がますます好きになった。

ところで、この本の巻末には謝意として
著者がインタヴューを行ったミュージシャンや関係者の名前が
1ページに渡って記載されているのだが、
その中に“ジャッキー・ワード”の名前があるのを
僕は見逃さなかった。

我が愛しのロビン・ワードにもインタヴューをしていたなんて。

セッション・シンガーとして60年代のヒット曲に多大な貢献をした彼女、
残念ながら本文にはどこを探してもその名前は出て来なかったが、
謝意のページに載っていただけで
何だか嬉しくなってしまった。

《お知らせ》
水上さんと隔月でやっているイベント
「Good Old Boys」が明日に迫ってきました。
3月はいつもゲストを呼ばずに2人だけでのんびりやっています。
年度末の忙しい時期ですが、前向きな春仕様のポップスを
多くかけたいと思っていますので、ぜひ遊びに来て下さい。

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音楽&トーク・イベント「Good Old Boys」
出演:水上徹/高瀬康一
日時:2013年3月27日(水)Open:19:00 / Start:19:30
入場料:1,000円
場所:Live Cafe Again
東京都品川区小山3-27-3 ペットサウンズ・ビル 地下1F
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今日のBGM:「Classical Gas」by Mason Williams

↑“ジャンゴ・ラインハルト風のギター・ソロから始まり、
ブリッジでワーグナー・チューバが集中砲火のように鳴った後、
「一斉突撃の転調」で最高潮を迎える怪物級のぶっとんだ傑作”
とは、本著での表現。ちょっと褒め過ぎ?

ELOの「First Movement(Jumping Biz)」は、
この「Classical Gas」にインスパイアされたというのが昔からの自説。
意外とジェフ・リンやロイ・ウッドあたりのイギリス勢にも
影響を与えてると思う。


The Mason Williams.jpg


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2013年03月24日

End Of The World

このブログでは毎月1回、
湘南ビーチFMの「Back To The 60's」というラジオ番組の内容を
レポートしてきた。

この番組は50年前のビルボード・ヒットチャートTop10を
紹介するという、自分にとってはとても貴重な番組だった。
このレポートもブログを開始した4年前から
今まで唯一続いているレギュラー・コンテンツだった。
(最初に登場したのはこの日のブログで1959年のチャート)

毎週土曜日に放送している番組なのだが、
僕はBrandin管理人の宮治淳一氏がDJ担当の日だけ聴いていた。
最初は宮治さんのお喋りが聴きたいからという理由だったが、
自分がまだ生まれていない時代のチャート自体がとても面白く
勉強にもなるため、月1回の放送がとても楽しみになった。

なんとその「Back To The 60's」が3月一杯で終了してしまう。
今年遂に(黄金のポップス年と言える)1963年に突入して、
まさに“お楽しみはこれからだ”って感じだったのに…。
せめて1963年だけでも丸々やって欲しかった。

局の都合など終了の理由は色々とあるのだろうが、
オールディーズを楽しめる番組がまたひとつ減ってしまって
本当に残念でならない。

そんなわけで、
最後となる1963年3月23日付けのチャートのレポいきます。

10位 ロイ・オービソン「In Dreams」
久々の登場。聴く度に泣きそうになる名曲。

8位 イーディ・ゴーメ「Blame It On The Bossa Nova」
先月の8位と変わらず。この曲の後には必ず「恋はメレンゲ」を
聴きたくなるね。

6位 カスケーズ「Rhythm Of The Rain」
この曲が作られたのはリーダーのジョン・ガモーが海軍に従軍中、
日本に駐屯していた時らしい。なのでこの詞は日本の情景なのだと。
そんな宮治さんのびっくり解説を聞くのも今日が最後。

5位 フォー・シーズンズ「Walk Like A Man」
先月3位でその後3週間1位を穫って今回5位に転落。
そして彼等の活躍はまだまだ続いていく。

4位 シフォンズ「He's So Fine」
マネージャーも務めたレナルド・マックが書いた大ヒット・ナンバー。
数ヶ月後にはキング&ゴフィンの「One Fine Day」で連続トップ5入り。

3位 ボビー・ダーリン「You're The Reason I'm Living」
レイ・チャールズ風のカントリー・バラード。
どんなタイプの曲でも歌えて本当に器用なお人。

2位 スキーター・デイヴィス「End Of The World」
1位 ルビー&ザ・ロマンティックス「Our Day Will Come」

最後のレポを飾るに相応しい素晴らしい2トップ。
特に1位のルビー&ザ・ロマンティックスの「Our Day Will Come」は
最初に出会った瞬間から春の空気をめいっぱい感じて
特別な曲になった。モート・ガーソン印の涼しげなオルガンの音色が
どうしようもなく春なのだ。この曲が間に合って本当に良かった。

1963年にはこの後も、ニノ&エイプリルとかエンジェルスとか
エセックスとかマーサ&ザ・ヴァンデラスとかタイムスとか
レスリー・ゴアとかロネッツとかビーチ・ボーイズとか…
まだまだいい曲がたくさん控えてたのに(泣)。

何はともあれ、
宮治さん、長い間お疲れ様でした。


今日のBGM:「End Of The World」by Skeeter Davis

↑このブログの常連アーティストによる、
番組終了にこれ以上ないくらいぴったりな曲!
(リンクはTV出演時の口パクじゃない映像)


End Of The World.jpg


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