
『ムーンライズ・キングダム』とどっちを観るか悩んだけど、
本作主演のジェニファー・ローレンスがアカデミー主演女優賞受賞という
情報を直前にキャッチしたのでこちらを選んだ。
(こだわりがあるようで、意外とこういう外部評価に弱い)
最初にこの作品の存在を知った時、
“プレイブック”という言葉のイメージから
単なるスポーツ物だと思ってあまり食指が動かなかった。
けど友人から原題の『Silver Linings Playbook』の
「Silver Linings」という言葉の意味を教えて貰って、
タイトルに奥深い解釈があることを知って興味が沸いた。
英語には「Every cloud has a silver lining」ということわざがあるという。
直訳すると「すべての雲には銀の裏地がある」となる。
分かりやすく言い換えれば「どんなに分厚い雲で覆われていても
その上には太陽が輝いている」というような、
逆境の時の希望の光、明るい見通しのことを示すことわざらしい。
つまり「Silver Linings Playbook」とは
「再起への指南書」というような意味になるのだ。
そのことを知って、
『世界にひとつのプレイブック』って
配給会社は相変わらず微妙な邦題を付けるなぁと苦笑してしまった。
映画の内容を端的に表すような邦題を付けてオチを見透かされるよりも、
ワザと分かりにくいタイトルを付けてぼやかしているのかも知れないけど、
まぁ分かりにくいよね。
確かに「再起への指南書」と言う通り、
傷を負った男女が再生していく姿を描いた、よくある物語。
しかしその傷の負い方も、負った後の壊れ方もハンパなくて、
その激しさがこの作品をかなり面白くしている。
(結局、物語のヴァリエーションは出尽くしたから、
あとはいかに突飛なキャラや設定を作り出せるかってことだ)
切れキャラのブラッドレイ・クーパーが再起するのに、
更にヤバいキャラのジェニファー・ローレンスをぶつける荒技が素晴らしい。
そのぶっとんだ2人のキャラを暴れさせていた前半は笑ってばかりいたが、
中盤あたりでいきなりダンス大会出場の話が登場して、
あとは大人しく収束していく感じがちょっと物足りなく思ったりも。
ジェニファー・ローレンスの演技は噂通り。
登場した時は「なんだこの女!?」って感じだったけど、
物語が進んでいくにつれて徐々に可愛く、魅力的に見えてきたのは、
彼女の演技と脚本と演出が三位一体で成功してる証なんだろう。
監督は当初、この役をズーイー・デシャネルで想定してたらしいけど、
キレるキャラはズーイーには何となく似合わない気がする。
それにズーイーはスタイルが良くないからダンス・シーンには向かないし。
ところで、本作にはある曲が主人公のトラウマとして登場する。
結婚式に使った曲だったのに、妻の浮気が発覚した現場にもその曲が流れていて、
それ以来、生理的に全く受け付けなくなったのだ。
気持ちは分からなくはないが、
その曲の方をちょっと可哀想だと思った。
こっちの勝手な都合で音楽を憎悪の対象にしてしまっている。
曲に罪は無いのに。
今までの人生で、
自分の中にはそんな曲など存在しないことを幸せに思った。
今日のBGM:「The Moon Of Manakoora」by Les Paul & Mary Ford
↑これはそのトラウマの曲ではなくて、
ブラッドレイ・クーパーとジェニファー・ローレンスが
近所のダイナーで初めてデートした時に店内のBGMでかかってた曲。
ジェニファーが「会社の同僚11人とやった」とか話してる後ろで、
こんなに甘くてとろけそうな曲がかかっていて笑ってしまった。