2013年02月26日

Silver Linings Playbook

『世界にひとつのプレイブック』を鑑賞。


Silver Linings Playbook.jpg


『ムーンライズ・キングダム』とどっちを観るか悩んだけど、
本作主演のジェニファー・ローレンスがアカデミー主演女優賞受賞という
情報を直前にキャッチしたのでこちらを選んだ。
(こだわりがあるようで、意外とこういう外部評価に弱い)

最初にこの作品の存在を知った時、
“プレイブック”という言葉のイメージから
単なるスポーツ物だと思ってあまり食指が動かなかった。
けど友人から原題の『Silver Linings Playbook』の
「Silver Linings」という言葉の意味を教えて貰って、
タイトルに奥深い解釈があることを知って興味が沸いた。

英語には「Every cloud has a silver lining」ということわざがあるという。
直訳すると「すべての雲には銀の裏地がある」となる。
分かりやすく言い換えれば「どんなに分厚い雲で覆われていても
その上には太陽が輝いている」というような、
逆境の時の希望の光、明るい見通しのことを示すことわざらしい。
つまり「Silver Linings Playbook」とは
「再起への指南書」というような意味になるのだ。

そのことを知って、
『世界にひとつのプレイブック』って
配給会社は相変わらず微妙な邦題を付けるなぁと苦笑してしまった。
映画の内容を端的に表すような邦題を付けてオチを見透かされるよりも、
ワザと分かりにくいタイトルを付けてぼやかしているのかも知れないけど、
まぁ分かりにくいよね。

確かに「再起への指南書」と言う通り、
傷を負った男女が再生していく姿を描いた、よくある物語。
しかしその傷の負い方も、負った後の壊れ方もハンパなくて、
その激しさがこの作品をかなり面白くしている。
(結局、物語のヴァリエーションは出尽くしたから、
あとはいかに突飛なキャラや設定を作り出せるかってことだ)

切れキャラのブラッドレイ・クーパーが再起するのに、
更にヤバいキャラのジェニファー・ローレンスをぶつける荒技が素晴らしい。
そのぶっとんだ2人のキャラを暴れさせていた前半は笑ってばかりいたが、
中盤あたりでいきなりダンス大会出場の話が登場して、
あとは大人しく収束していく感じがちょっと物足りなく思ったりも。

ジェニファー・ローレンスの演技は噂通り。
登場した時は「なんだこの女!?」って感じだったけど、
物語が進んでいくにつれて徐々に可愛く、魅力的に見えてきたのは、
彼女の演技と脚本と演出が三位一体で成功してる証なんだろう。
監督は当初、この役をズーイー・デシャネルで想定してたらしいけど、
キレるキャラはズーイーには何となく似合わない気がする。
それにズーイーはスタイルが良くないからダンス・シーンには向かないし。

ところで、本作にはある曲が主人公のトラウマとして登場する。
結婚式に使った曲だったのに、妻の浮気が発覚した現場にもその曲が流れていて、
それ以来、生理的に全く受け付けなくなったのだ。

気持ちは分からなくはないが、
その曲の方をちょっと可哀想だと思った。
こっちの勝手な都合で音楽を憎悪の対象にしてしまっている。
曲に罪は無いのに。

今までの人生で、
自分の中にはそんな曲など存在しないことを幸せに思った。


今日のBGM:「The Moon Of Manakoora」by Les Paul & Mary Ford

↑これはそのトラウマの曲ではなくて、
ブラッドレイ・クーパーとジェニファー・ローレンスが
近所のダイナーで初めてデートした時に店内のBGMでかかってた曲。
ジェニファーが「会社の同僚11人とやった」とか話してる後ろで、
こんなに甘くてとろけそうな曲がかかっていて笑ってしまった。




posted by Good Time Graphicker at 19:57| 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年02月25日

Bossa Nova U.S.A.

一昨日は湘南ビーチFMの「Back To The 60's」の日。
50年前の1963年2月23日のチャートを楽しんだ。

先月のチャートを紹介した際に、
もう少し経つとサーフィンやガール・グループのような
新しいブームの波が次から次へと押し寄せてくると書いたが、
その前にもうひとつ、大きな波があった。

そう、ボサ・ノヴァ・ブーム。

今月のチャートにはその象徴的なヒット曲のひとつとして、
イーディ・ゴーメの「Blame It On The Bossa Nova」が遂に登場。
なんと18位から一気に8位にジャンプアップしてきたのだ。
(この曲のことはこの日のブログにも書いた)

ジョー・ハーネルの「Fly Me To The Moon」も14位に、
デイヴ・ブルーベック・カルテットの「Bossa Nova U.S.A.」も
89位に登場し、軽やかなボサ・ノヴァのリズムが
チャートを春めいた雰囲気に彩ってくれる。

9位のスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ
「You've Really Got A Hold On Me」、
5位のカスケーズ「Rhythm Of The Rain」など、
トップ10には有名曲が続々登場。

先月1位だったルーフトップ・シンガーズの
「Walk Right In」が4位に落ちて、
入れ替わったトップ3は以下の通り。
3位 フォー・シーズンズ「Walk Like A Man」
2位 ディオン「Ruby Baby」
1位 ポール&ポーラ「Hey Paula」

カスケーズの「Rhythm Of The Rain」や
ポール&ポーラの「Hey Paula」って
つい日本だけのヒット曲だと思いがちだけど、
全米でも大ヒットだったんですなぁ。

久々に登場のディオンも嬉しかったけど、
フォー・シーズンズの勢いが止まらないのが嬉しすぎる。
「Sherry」が1位、続く「Big Girls Don't Cry」も1位、
クリスマス・シングルを挟んでリリースされた
この「Walk Like A Man」もこの後すぐに軽々と1位を穫ってしまうのだ。

50年代から苦節10年、
フランキー・ヴァリを初めとするメンバーたちは
遂に訪れた春をさぞかし謳歌していたことでしょう。


今日のBGM:「Wild Weekend」by Rockin' Rebels

↑今週10位に登場した、
やさぐれたサックスといなせなギターがイカしたロッキン・インスト。
ニューヨークはバッファローで結成されたザ・レベルズが
もともとは1960年にリリースしたこの曲、
バンド名もレーベルも変えたらなぜか63年に大ヒット!

20代の頃、
デイヴ・クラーク・ファイヴの「Having A Wild Weekend」と、
この「Wild Weekend」のNRBQの歌詞付きカヴァーが
週末の遊びのテーマ・ソングだったなぁ...(遠い目)。


Rockin' Rebels.jpg


posted by Good Time Graphicker at 03:57| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年02月20日

The First Version Of “A Groovy Kind Of Love”

最近はそんなに忙しくはないので、
ここ数年にリリースされてちゃんと聴いていなかった
各種ボックス・セットを改めて聴き直しながら、
iTunesにリッピングしたりしている。

フィレスのアルバム・コレクションとか
ラスカルズのボックスとかレイ・チャールズのボックスとか。
中でもやっぱり(手前味噌になってしまうけど)、
『Atlantic Rhythm & Blues 1947-1974』は聴き応えがあった。
R&Bやソウルは今まであまり熱心に聴いてこなかったジャンルだから
新鮮とも言えるし、とても勉強にもなる。

特に今回のパッケージで新たに編纂された
9枚目と10枚目の選曲が素晴らしい。
フィラデルフィアのヴォーカル・グループのキャステルズとか、
ボブ・クリュー・プロダクションの下で制作されたハイ・キーズとか、
モータウン・マナーのガール・グループのドレルズとか、
パティ・ラベル&ザ・ブルーベルズとか、
自分好みの曲がいっぱいでまだ当分は楽しめそう。

話は逸れて、
パティ・ラベル&ザ・ブルーベルズと言えば、
マインドベンダーズやフィル・コリンズで有名な
「A Groovy Kind Of Love」を彼女たちも演っていることを最近知った。
アトランティック移籍第1弾の『Over The Rainbow』という
アルバムに入っているらしい。

そのヴァージョンをYouTubeで聴いてみたら、
ストリングスとコーラスで盛り上げ捲る
コッテリとしたアレンジが実にドラマティックで、
これはこれで素晴らしい。

マインドベンダーズとパティ・ラベル&ザ・ブルーベルズ、
どっちのヴァージョンが早くリリースされているか
気になったので調べてみた。

パティ・ラベル&〜の『Over The Rainbow』というアルバムは
1966年の1月にリリースされている。
(「A Groovy Kind Of Love」はシングル・カットもされているが、
アルバムからの第2弾シングルなのでアルバムの方が先だと思う)

マインドベンダーズのシングルは1966年の3月のリリースだから、
一瞬だけパティ・ラベル&ザ・ブルーベルズのヴァージョンの方が
早く世に出たことになる。

では彼女たちがオリジナルかと思いきや、
なんとダイアン&アニータというグループが
1965年にリリースしていることをたった今、知ってしまった。
これが正真正銘のオリジナルだということは、
有名曲の一番最初のヴァージョンばかりを集めた
エイスのコンピ『You Heard It Here First!』にも
収められていることからも分かる。

ダイアン&アニータのヴァージョンを聴いてみると
メロディをすごく素直に歌っていて、マインドベンダーズは
このヴァージョンを参考にしたんじゃないかと思えてくる。

なんでこんなことを詳しく書くのかと言うと、
以前この日のブログで僕は「A Groovy Kind Of Love」は
マインドベンダーズがオリジナルだとうっかり書いてしまったからだ。
とんでもない間違いでした。訂正します。

この曲はまだ17歳だったトニ・ワインがメロディを書き
22歳だったキャロル・ベイヤー・セイガーが詞を書いた、
いわゆるアルドン〜スクリーン・ジェムズ系のポップスだから、
英ビート・グループのマインドベンダーズが
いきなり取り上げるのはおかしいと何となく腑に落ちなかった。

大好きなこの曲の出自が分かって、
ようやくすっきりとした気分。


今日のBGM:「A Groovy Kind Of Love」by The Mindbenders

↑誰がやっても胸がキュンとするのは、
この曲の持つ甘く切ないメロディのせいなのだろう。
確か伊藤銀次氏もフェイヴァリット・ソングのひとつに挙げていたっけ。


The Mindbenders.jpg


posted by Good Time Graphicker at 05:16| 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする