2012年05月25日

Atlantic Rhythm & Blues 1947-1974

HPの“Works”に
『アトランティック R&B 1947-1974』をアップしました。

アトランティック創立65周年を記念して企画された
10枚組BOX SETが、一昨日ようやく発売された。

“ようやく”というのは、
企画そのものは2009年の秋くらいに話を頂いていたが、
権利許諾が難航して一回頓挫した経緯があったからだ。
3年越しの制作に遂に決着が付いたのだ。

本BOX SETの基となったのは、
アトランティックの創始者アーメット・アーティガンの監修により
1985年に発売されたアナログ・アルバム集(各2枚組全7巻)だ。
このレコード・セットは昔何回も中古レコード屋で見たことがある。
ソウルを本格的に聴く時にいつか買おうと思っていたが、
まさか自分がその改訂版のアートワークを手がけるとは
夢にも思っていなかった。

そのレコード・セットに収められていた収録曲を8枚のCDに再編集し、
更に鈴木啓志氏の選曲によるレアリティーズ2枚を加えた
CD10枚組として、今回新たに甦った。

もちろん最新デジタル・リマスタリングを施し、
多くのレア・ジャケット画像を眺めながら
鈴木氏渾身のライナーノーツが読める
オール・カラー全176ページのブックレットも付く。

CDパッケージの仕様は
2009年に手がけた『ジャズ・イン・スウェーデン:1949-1961』の、
カンパニー・スリーヴ風の厚紙にCDディスクを差し込むタイプの
フォーマットを今回も採用。
まるで7inchのシングル盤が10枚分入っているかのような
重量感溢れるシングル・レコード・サイズのボックスだ。

今回デザイナーとして特にこだわったのは、
カンパニー・スリーヴを模したCD挿入厚紙のデザイン。
『ジャズ・イン・スウェーデン』では全て統一したデザインだったが、
今回はアトランティックの歴代カンパニー・スリーヴのデザインを
収録曲の時代に合わせて復刻してみた。
40年代〜50年代の曲が入った盤では茶紙の2色刷り、
60年代〜70年代の曲が入った盤では白紙の4色刷りといったように、
時代に合わせて紙質と印刷の仕様も変えるといった懲りようで、
10枚全てが違うデザインとなっている。


Atlantic Sleeve1.jpg

Atlantic Sleeve2.jpg


本作のプロデューサーであるワーナーの宮治さん(と自分)の
7inch & カンパニー・スリーヴへの愛が爆発した
傑作パッケージになったと自負している。

内容についてはここで細かく書く必要はないでしょう。
R&B、ソウル・ミュージックという枠だけに収まらない、
20世紀の文化遺産と言っても過言じゃないと思う。
エルヴィスがスペクターがキャロル・キングがビートルズが
胸を焦がして憧れた、まさに魂の音楽が目一杯詰まっている。

有名曲、歴史的重要曲が惜しげも無く次から次へと登場する
Disc 1〜Disc 8が本ボックスの主役であることに間違いはないが、
個人的に楽しめたのはレア曲満載のDisc 9とDisc 10だ。

入手するのに数千ドルを要するというノーザン・ソウルの
メガレア・シングル曲なども収録されているようだが、
そんな希少性よりも、
単純に聴いていてめちゃくちゃカッコいい曲が多かった。
鈴木啓志氏の選曲は、往年のディープなソウル・ファンの価値観も
考慮に入れつつ、ジャンプ・ブルースやジャイヴなどを好む
近年の若いDJセンスにもしっかりと目配せをしているように思えた。

なにせ10枚組で全253曲。通して聴いたら11時間以上!
これから長い時間かけてたっぷりと楽しませて頂きます。
(興味がある人はこちらからどうぞ。なお本作は店頭でも購入可能)


今日のBGM:「Bip Bop Bip」by Pretty Boy

↑Disc 9に入っている、衝撃的なインパクトだったナンバー。
ロックン・ロール黎明期の特徴である
エグいヴォーカルと荒々しい演奏に完全に打ちのめされた。
(オリジナル・シングルの音圧、スゴいだろうなぁ)

実はこの“プリティ・ボーイ”の正体は若きドン・コヴェイで、
当時彼はリトル・リチャードの追っかけだった。
リチャード本人から、彼のバンドのアップセッターズを借りて
録音を許されたのがこの「Bip Bop Bip」だったという。
(猥雑さとやさぐれ感はリトル・リチャードよりも上をいく!)


Pretty Boy.jpg


posted by Good Time Graphicker at 05:37| 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月22日

Zutto × 3 Summer

HPの“Works”に
村田和人の新作アルバムをアップ。
今回もジャケットのイラストのみ担当しました。

2009年にリリースされた『ずーっと、夏。』、
2010年にリリースされた『ずーっとずっと、夏。』に引き続き、
“夏3部作”の完結篇が明日遂に発売。
タイトルは(もちろんこれしかない)『ずーっとずっと、ずっと夏。』。
(この妥協を許さないタイトルの付け方に、
村田さんの夏という季節に対する強烈なこだわりを感じる)

ジャケットのイメージで言えば
1作目が真夏、2作目が晩夏と続いたので、
今作は初夏の街中という感じ、かな。

撮影は前2作の湘南・葉山方面から初めて都内に移って福生にて。
16号線沿いのカッコいいアメリカン・ダイナーで撮影された。
福生は大学4年間を過ごした懐かしい場所なので
ぜひ撮影に参加したかったが、別件の仕事で現場に行けなかったのが残念。
ダイナー好きとしてはぜひ今度行かなければ。
(ブックレットの中の写真に店内の様子もたくさん写ってます)

内容は相変わらず絶好調!

「台風ドライブ」(1983)「颱風少年」(2009)に続く
“スコール系”パワーポップ「Here Come The Thunder」で幕が開き、
アヤパン出演の話題のCMソング「太陽のPrecious」、
メロウなAORテイストの「幸せなカンちがい」、
70'sロック親父世代には涙無しには聴けない「耳鳴りの夏」、
4ビートでジャジーなグッドタイム・ナンバー
「HAVANA MOON 〜王様は寝ている〜」などなど、
ハズレ無しのサマー・ソングが次から次へと登場してくる。
(全て夏の曲なのに、同じタイプの曲がないのがスゴい!)

今回は5月リリースということで、
梅雨をイメージしたような物憂げな「Gray Sky Blue」や
「Love Stories」なんて曲も入っていたりして、
そこら辺もヴァリエーションの豊富さに一役買っていると思う。

でもやっぱり一番気に入ったのは、
ビーチ・ボーイズの「Good Vibrations」風コーラスが
最高にポップな「どこ吹く風」というナンバー。
こういう曲を聴くと、ビーチ・ボーイズの特殊な音楽性が
日本の夏の情景とあまりにも濃い親密さを見せていて
感動すら覚えてしまう。

作詞家の田口俊氏の(湘南在住としか思えない)ディテールの
細かい情景描写にもつい嬉しくなってしまう。
八幡宮や江ノ電や横須賀線が出て来たり、
七里ケ浜にあるAmalfiというイタリアン・レストランが登場したり。
(ジョギングでいつも店の前を通る)

一番笑ったのが「どこ吹く風」に出て来た
「辻堂の駅がすごくなった」という歌詞。

いやほんとすごくなったんすよ、辻堂駅!


今日のBGM:「一本の音楽」by 村田和人

↑本作には名曲「一本の音楽」の2012ヴァージョンが
ボートラとして入ってる。
アコースティックな雰囲気のこのリメイク版も良かったが、
今日はオリジナル・シングル・ヴァージョンで聴きたい気分。
この季節にはぴったりの最高のドライヴ・ソング!


一本の音楽.jpg


posted by Good Time Graphicker at 05:50| 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月20日

The Artist

『アーティスト』をようやく観た。


The Artist.jpg


チャップリンやアステア&ロジャースのRKO作品、
『雨に唄えば』などの昔の映画が大好きで、
大学時代にサイレント・ムーヴィーを自主制作で作った
(字幕を1枚1枚手描きで描いたりなんかして)
自分のような人間にとっては、
観る前から「こんなのいいに決まってるじゃん!」と思っていたが、
観たらやはり当然のように素晴らしかった。

ただこういう(自分の趣向と丸カブりの)
昔のものに対する偏愛を滲ませた作風って
「今の若い人にはどうなのかなぁ?」と
妙に客観的になりながら鑑賞してしまった。
日本で本作が興行的に苦戦を強いられているという噂も聞いていたから、
余計にそんな感情が渦巻いていたのかも知れない。

以前、新しい映画しか観ようとしない女性に
「なんで昔の映画を観ないの?」と聞いたら
「白黒だから」という答えが返ってきてびっくりしたことがある。
白黒だからという理由だけで観ないのなら、
役者が全く喋らない映画なんて到底無理なはず。

最近の圧倒的なCGワーク、スピード感溢れる編集、
音も音楽も満載の(行き過ぎた)エンターテインメント映画に
日々慣れ親しんでいる世代にとっては、
やはり本作が味気なく映るのはしょうがないかも、なんて思ってしまった。
(若い人がオールディーズを聴かない問題と通底してる?)

もちろん本作は
ただの昔のサイレント・ムーヴィーをそのまま再現しただけではなく、
今の時代に制作するからこそ可能だった要素もたくさん入っている。
一見ウェルメイドでありながら、実は最新の技術や斬新なアイディアを
多く入れ込んでいるという事実も、
その巧みさゆえにあまり気付かれてなさそうなのがとても残念。

あえて内容には触れないけど、
往年のハリウッド映画をたくさん観ている人には
ニヤリとするシーンが続出です。
個人的に特に嬉しかったのはビリー・ワイルダー作品へのオマージュの多さ。
『サンセット大通り』『あなただけ今晩は』や、
ラストなんかモロに『アパートの鍵貸します』だし。
(そう言えば監督のミシェル・アザナヴィシウスはアカデミー授賞式で
「感謝を捧げる」とワイルダーの名前を挙げてましたね)

フランス映画の本作がアカデミー作品賞を獲って
何となく違和感を感じないわけでもなかったけど、
アメリカ映画界が再び原点回帰モードになりつつあるのを
示唆してるのかななんて思ったりも。
(その示唆が自国の作品によってなされなかったことが問題だが)


今日のBGM:「Pennies From Heaven」by Rose Murphy

↑本作は音楽も素晴らしかったけど、
その中でも唯一ヴォーカル入りナンバーだったこの曲を聴いて
「うわぁ、ブラッサム・ディアリーみたい!」と興奮した。

ローズ・マーフィーについては
以前このブログでも触れていましたね。
本当にキュートな歌声で、今度10インチとか見つけたら買ってみようかと。


posted by Good Time Graphicker at 03:15| 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする